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ハロウィンタウン
木の間を抜けると、景色は一瞬にして大きく変わり少し不気味な街並みに出た。日本とは思えないようなレンガ作りの家屋が並んでいて、そこらじゅうでカボチャをくりぬいたランタンが街を照らしていた。明るかったはずの空はこちらへきた途端に暗くなった。見たことない形の月が暗闇を照らすだけだった。
「ハロウィン…?」
「僕らはここをハロウィンタウンって呼んでるんだ。生と死の狭間の世界だから、君の世界で言うところのオバケに近いものが住んでるのさ。オバケはハロウィンに人間界を出歩くものだろ?だからここは毎日がハロウィンなんだ。」
「なるほどー。」
「さーさ、僕の住む街を紹介するよ!」
少し不気味ではあったけれどシキの笑顔が全てを吹き消してくれた。むしろ見たことのない世界で僕はウキウキしていた。
「ってーな。」
「わっごめんなさい!」
見慣れない周りをグルグルと見渡しながら歩いていると固い誰かにぶつかった。前を見るとカボチャを被った人が目の前にいた。
「あ?これがシキのお気に入りか。」
「ちょっとジャック、僕の大切な友達に失礼な態度取らないで。」
シキは知り合いみたいだった。ジャックと呼ばれたその人のカボチャは不思議なことに彼の喋るのに合わせて表情を変えた。
「僕、白鳥リョウですっ、よろしくお願いします!」
「あぁ、俺はジャック。この街の照明を作ってる。落ち着くから被ってっけど、別に顔なしとかじゃねーからな。普通の人間だ。」
ジャックはそういうとカボチャの被り物を脱いだ。可愛い雰囲気のカボチャとは裏腹に金色の短髪で黄金色の三白眼をした尖った印象の男だった。見た目の歳は僕らより上だろうし背丈も僕らよりは高いが若い感じがした。
「じゃっくおー…らんたん?」
「おー、お前話がわかるじゃねーか。ジャックオーランタンの生みの親、ジャック様だ。覚えとけ。」
ジャックは僕の頭をガシガシと撫でて笑った。ちょっと怖いけど悪い人じゃなさそうだ。
「ジャックは、僕がこの街に呼んだんだ。口は悪いけどいい奴だよ。」
「どっからどう見てもいい奴だろうがよ。さっきはぶつかって悪かったな。」
ジャックは僕の手を取ると飴を一つ手の上に乗せた。
「人に会ったらトリックオアトリートって言ってみな。ここは毎日ハロウィンだからな。」
「ありがとう!」
「ほら、舐めていいぜ?歩き食いで怒るような細けぇ奴はこの街にいないからな。」
僕がジャックさんから貰った飴を早速口に放り込み舐め始めるとジャックさんは口角を上げた。何故だろうか、ジャックさんは笑顔なはずなのにその顔に嫌な気を感じた。こんなの失礼だ、と思ってそう思ったことがバレないようにつくろった。
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