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能力

しばらく無言のままでいると、扉が開いて変な機械に乗った若い男がやってきた。背はそんなに高くないけれど、体のところどころが金属でできていて、目立っていたのはアダムさんと同じ右目の周りが金属に成り代わっていた。 「おい、アダム、こいつさっきより拗ねてないか。」 「すいません博士っ、でも小さい子だから仕方ないかと…」 不機嫌そうな顔で博士と呼ばれたその人は機械に座り、僕の名前を呼んだ。 「白鳥リョウ、だな。俺はお前に何でここに連れてこられたかを教えてやるためにわざわざ来たんだ。聞いてるか??」 「…」 「人の話をちゃんときかねぇ奴はお仕置きだ。」 「はっ??」 どうやら博士は怒りの沸点がものすごく低い人らしい。指で合図するとアダムさんは申し訳なさそうに僕をベッドに抑え込んで、博士は僕の肩に何かを刺した。 「痛ッ!!」 「いいか、俺の言う事を聞かない奴には薬の実験台になってもらう。身体が熱くなるだろうがよく聞けよ。」 「ぅ…はい…。」 最低な気分だ、身体が熱いからか目から涙まで出てきたが逆らうと怖いので話に耳を傾けた。 「お前には能力がある。ただそれはお前を滅ぼす力だ。お前が力を制御できるまで、お前を誘拐するのがシキの狙いだ。まずここまで理解したか?」 「博士…、さすがに難しいです。」 「は?低脳はこれだから面倒だな…。お前には、”自分の不幸を他人の幸せにする”能力があるんだ。だからお前は不幸になればなるほど近くにいる人間は得をするっつーわけだ。それも全て無意識でやっちまう。自覚はあるだろう?」 「…ある。」 「だろうな。そしてこの能力はシキと同じ力だ。シキはお前を自分の二の舞にさせたくないから、お前に嫌われてでもここに連れ去った。お前が能力を制御できるようになるまで自分の管理下に置くためにな。」 「シキの、二の舞って…。」 「まぁ彼奴も、苦労してきたって事だ。この世界にいるやつなんざ皆”死に損ない”だからな。これで理解したか?」 「理解、した…、でも、それってこっちで酷い目にあうか、人間界で酷い目に合うかじゃん…っ。それ、意味あるの?」 「少なくとも人間達よりか、俺らは優しいし自制心がある。何よりお前の力の効果が俺ら相手には弱まるからな。もしお前が人間界の汚い奴らにその能力がバレればどうなるかわかるか?」 「…わかんない。」 「まぁ小学生だからわかんねーだろうが、無理矢理犯されて痛ぶられて監禁されるのが関の山だろうな。お前が嫌がれば嫌がるほど、相手は幸せになる、それがお前の能力なんだ。」 想像すると恐ろしかった。シキはそれを防ごうとしてくれていた、それも自分を不幸にする事で僕を幸せにしていたんだと気付いた。 「さて、お前のデータも取れた事だ、解毒剤打つからな。」 「は??」 またアダムさんに抑えつけられ注射された。先ほどまでの体の火照りは嘘みたいになくなった。 「シキは実験をさせてくれないからな、実際不幸を幸せに変える力を現象として証明できてはいないんだ。お前はその点簡単に注射が打てるし実験もできる。お前の存在は科学に大いなる発展をもたらすぞ!!ハハハッ!」 博士が変な人だと言ってた意味がとてもよくわかった気がした。 アダムさんは申し訳なさそうに 「君の危害を与えるような実験はきっとしないと思うからっ!ごめんね!」 と補足した。

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