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第18話 初体験*
スゥエンは、薄闇に溶解しそうになる意識を必死に繋ぎ止めていた。
ーいったい---何が---ー
事態を懸命に把握しようとするが、思考は片端からぽろぽろと崩れ落ち、形を成さない。ともかくも横たえられたベッドから身を起こそうとするが、全く身体に力が入らない。ようやく瞼を開けば、オルテガの雄獅子のような鋭い眼差しが自分を見据えている。
「でん---か---?」
「オルテガ、で良い。------息は、苦しくないか?深く呼吸をして、---そうだ、ゆっくりとな。水を飲むか?」
オルテガの大きな手が頬に触れている。その掌から熱が伝わり、なおのこと身体の芯がジリジリと焼け焦げるように疼く。
「水---欲しい---です---」
小さく頷くと、オルテガが覆い被さり、唇を塞ぐ。口移しで冷えた水が喉元に押し込まれ、スゥエンは、小さな喉仏をこくりと鳴らし、大きく息をついた。
「暑いだろう。」
オルテガの指が、スゥエンの着衣にかかり、一枚ずつ丁寧に脱がせていく。抗おうとする指を極めて優しい素振りで除けて、ほんのり薄紅に染まった素肌を露わにしていく。
「おや---」
オルテガはわざとらしく声をあげ、スゥエンの胸元の淡く色づいた突起を指で触れる。スゥエンの背中がピクリと震え、反り上がる。
「勃っておるな---わかるか。」
くぐもった声で囁き、指先で抓るように摘まみ、揉み潰す。スゥエンの背がひときわ大きく震え、唇から小さな悲鳴が漏れる。
「あっ!---あぁっ------イヤだ-----そん---な----とこ---。」
オルテガの唇に突起を捕らわれ、啜られ、熱い舌で舐め上げられ、スゥエンは顎をせりあげ、身を捩った。エメラルドの二つの瞳が、涙で潤んでいる。
「ここなら、良いのか。」
オルテガは片腕をスゥエンの手に廻し、もう一方の手をボトムの内側に滑り込ませた。そこは既に布地を押し上げて屹立し、熱を帯びて自らを主張していた。
「い、イヤ------。」
スゥエンは羞ずかしさに顔を殊更に紅くして、オルテガの手を払い除けようと試みた---が、難なく手首を捕まれ、絡め取られた。
「濡れておるな---。」
オルテガはボトムを剥ぎ取ると、下履きの布地越しにスゥエンの若茎の先端を掌に包むように握り、擦り上げた。
「あっ---あぁあっ---い、イヤ---止め---」
スゥエンは半泣きになって、オルテガの手から逃れようと必死に身を捩った。触れられる度に、そこから熱が湧き、逃れようと身を揉む度に全身に熱が拡がり、身体の芯をドロドロに溶かされていく気がした。
オルテガはニヤリと笑って、下履きを毟り取り、ぴくぴくと脈動するそれを手に取った。二本の指で覆いを剥き上げ、淡いピンク色の亀頭を露出させた。そこは、しっとりと湿り、透明な露を溢していた。
「愛らしいな---。実に初々しい。」
少年のままのようなそこは、Ωであるが故に、厳しく禁欲的な生活を自ら課していた、スゥエンの意気地の表れでもあった。
それを今宵、踏みにじり、欲望のままに別な生き物に作り替える-------オルテガは、ぞくぞくする快感に密かに身を震わせた。
「女性と交わったことは---?」
「ありません---。オルテガさま---どう---か---」
若茎をオルテガの掌に弄ばれたまま詰問され、スゥエンは目を真っ赤にして涙を滲ませていた。
「では、ひとりでしたことは---?」
「そんなこと----もぅ、お許しください。オルテガさま---。」
涙ながらに訴えるスゥエンを抱き起こし、自分の体躯の裡に包み込んで、オルテガは耳朶まで真っ赤に染まった耳許に囁いた。
「ならば、ワシが抜いてやろう。------出さねば毒だからな。」
勿体をつけるその声は、既に欲望に濡れていた。逃げようとするスゥエンの身体を胸元に掻き抱き、その右手に自身の若茎を握らせた。
「知らぬわけではあるまい?」
揶揄するように形の良いぽってりとした耳を唇に含み、囁く。怖れ戦慄いて自らを見上げるスゥエンの瞳が涙を含んで、揺れていた。オルテガは一層激しく劣情を掻き立てられ、その手で、スゥエンの右手ごと若茎を押し包み、ゆるゆると扱き立てた。
「あ---あぁ---っ---!---なり---ませ---ん----オルテガ---さま---その------よぅ----な----あひっ---あぁ---っ---。」
スゥエンは、心臓が下腹部に落ちていったかと思うほどの、激しい動悸とともに、灼熱が身体の内奥で幾度もはじけ、脳が焼け焦げそうだった。
視界が真っ赤に染まり、そして白い光が脳裏を何度も奔った。両目を見開き、蕩け始めたスゥエンの意識にオルテガの囁きが流れこむ。それは甘く、毒に満ちた悪魔のような囁きだった。
「イきなさい。---イくんだ、スゥエン。躊躇うことはない。---ほら、君の身体は、こんなに歓んでいる----」
オルテガの手の動きが一層激しくなり、スゥエンは、遂に大きく腰を突き出し、二度三度と、ガクガクと身体を激しく震わせて、果てた。
「可愛よ、スゥエン---。君の蜜は、こんなにも甘い---。」
驚愕と羞恥に身を震わせるスゥエンの視線の片隅で、耐えきれずに吐き出した白濁を、オルテガが美味そうに舐めとっていた。その唇の紅さと昏く含み笑う声をぼんやりと眺めながら、スゥエンは意識を手放した。
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