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第19話 初夜*~喪失

 パチパチと薪のはぜる音が、微かに耳に触れた。スゥエンは首を巡らせ、昏い室内でゆらゆらと揺らめく暖炉の炎に目を向けた。それは激しく波立ってはまた静まり、うねりながら天を突いて、捩れる。まるで、自分の裡に興きた得体の知れない昂りそのもののようだ。  スゥエンは、じっと炎を見詰めた。突然にスゥエンの奥深くに興った焰は、まだ消え失せてはいなかった。むしろ燠火のように、じりじりと身の内を焦がし続けていた。  息苦しさに喉が詰まる。ドクドクと腹の奥が脈打ち、内臓が蠢く。かつて感じたことの無い異様な感覚に、スゥエンは身を疎ませた。 ーみ---水----ー  かろうじて身を起こそうとした目線の先に、仄暗い光を湛えた二つの眼が見えた。薄っすらと口元に笑みを浮かべ、見詰めている。その視線に晒されている自分の肢体が、一糸纏わぬ全裸であることに気付き、スゥエンははっ---と身をこごめた。 「気がついたか?」 「オルテガ---さま---。」  慌てて、手近にある布を掻き寄せようとする手を捕まれ、シーツに縫い付けられる。褐色の肌がスゥエンに覆い被さり、唇を重ねてくる。 息苦しさに喘ぐ唇の内に肉厚の舌を捩じ込み、スゥエンの口中をまさぐる。 「ん---んぅ---。」  舌を強く吸い上げられ、唾液を飲まされる。甘い---毒を孕んだ蜜に、頭の芯が痺れる。  存分にスゥエンの唇を味うと、オルテガは満足気に口元を歪めて笑み、絶え絶えに息を吐くその肩を抱き寄せた。 「スゥエン---お前はワシのものだ。ワシの女になるのだ。------妻となり、ワシの子を産み、その母となるのだ。」 「オルテガさま---なぜ?----オレは---男です。なのに------」   オルテガの分厚い胸を押し返す腕には悲しい程に力が入らない。それどころか、オルテガの胸の熱さ、力強い鼓動に、身の内の熱が一層激しく燃え盛る。 「お前はΩだ。男であり女であるもの------ワシはその全てをワシのものにしたいのだ。」  オルテガの手が、スゥエンの股関をまさぐり、秘奥へと潜り込む。 「い---イヤ、な、何---を---」  後孔の、ぬるりとした感触と異物が押し入る鈍痛に、スゥエンは総毛立った。オルテガはニンマリと笑い、スゥエンの後孔のなお深くに指を差し入れた。 「お前のここは、単なる排泄器官ではない。ワシの雄を受け入れ、子を宿す性器だ。---ワシが手ずから、じっくりと作り換えてやろう。」  グリグリと内奥を探り、肉襞を擦りたてる。  スゥエンはそのおぞましい異物感に身を震わせた。 「や------止めろ。止め---て---くだ---さい。---ひぐっ!」  スゥエンは背骨を駆け昇る激しい痺れに、両の目を見開き、身をのけ反らせた。 「ほぅ、ここか-----。」  オルテガはスゥエンの内奥の敏感な部分を探り当てると、愉し気に指先を押し付け、押し潰すように、強く弱く掻き上げ、擦り立てた。 「ひっ---ひあっ!---い、イヤ---あっ--あひっ---ひいぃっ---!」   スゥエンは、両の目から涙を溢れさせ、喘ぎ、身を捩った。  オルテガは、指を増やし、情け容赦なくスゥエンの敏感な部分を責め立てる。 「感じておるのだろう、スゥエン。---気持ち良いだろう。---ん?------前も勃ってきておるぞ。」 「い---イヤだぁ----あ、あぁあっ---あひっ---ひぅぅ---あ、あぁああぁ------っ!」  オルテガにやわやわと勃ち上がりかけた若茎をむずと掴まれた。秘奥を掻きまわされ、捏ね回されながら、若茎を扱き立てられて、スゥエンは敢えなく昇りつめ、達した。  ぴくぴくと身体を痙攣させ、身体を突き抜ける快感に打ち震えるスゥエンの眼にはもはや何も映っていなかった。脳裏で白い光が幾度も炸裂し、視界を真っ白に染め上げていた。 「だいぶ解れてきたようだな。---だが、破瓜というのは、痛みを伴うものだ。スゥエン、お前は今宵、処女を喪うのだ。このワシによって---な。」  オルテガは、ひとりほくそ笑むと、スゥエンの両脚をいっぱいに押し開いた。そして、おもむろに、天高く屹立した己れの雄をスゥエンの後孔の入り口に押し当てた。それは、スゥエンのそれとは比べ物にならない、大きく太い欲望の塊だった。 「さぁ、ひとつになろう。スゥエン---。」  オルテガは、赤黒く照りかえる凶器のごときそれを、ゆっくりとスゥエンの内奥へと押し入れた。 「あひっ!---ひいぃっ!---ひぐぅっ!---ひいぃっ!」  スゥエンの口は大きく開き、切迫した悲鳴が喉を突いた。メリメリと肉襞を押し拡げ、侵入してくる圧迫感。狭い隘路を無理矢理に押し拡げられる苦痛と恐怖に両の目は見開かれ、涙が止めどなく溢れ出ていた。  内臓を押し上げられるような苦しさに息が止まりそうだった。  オルテガは、反り返り張り切った野太い先端を、ようやくスゥエンの内奥に捩じ込むと、しっかりとその細い腰を掴み、一気に内奥に突き入れた。 「ひぎぃぃ---!」  スゥエンの口から、一際大きな叫びがあがった。が、オルテガは、少しも斟酌することなく、抽挿を始めた。 「ひっ---ひいぃっ---ひぐっ---!」  情け容赦の無い律動にスゥエンはひたすら身を強張らせ、のけ反り、首を左右に振りたて、咽び泣いた。 「大丈夫だ。スゥエン------すぐに良くなる---。」  オルテガは、自らのモノをスゥエンの内に収めたまま、スゥエンの身体を抱き起こし、抱きすくめた。

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