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第26話 報せ

 スゥエンが、ヴェーチェに手紙を託して、一月近くが経った。待ち焦がれている返信はまだ届いていなかった。 ーやはり、届いていないのか---。ー  暗澹たる気分で、俯いてスープを啜るスゥエンに、オルテガが溜め息混じりに言った。 「そんなに郷が恋しいのか------本当にお前は子どもだな。」  馬鹿にするようなオルテガの口調にスゥエンはむっ---として顔を上げた。 「国の様子が心配なだけだ-------オレは子どもじゃない。」  ムキになるスゥエンに、オルテガはふふん------と笑った。 「明日、客が来るぞ」 「えっ---?」 「ナヴィアから、お前に客が来る---と言ったのだ。」  スゥエンの顔が一瞬、ぱぁっ----と輝いた。途端に今度はオルテガが不機嫌になった。 「まぁ、せいぜい歓待してやるがいい。」  夕食もそこそこに済ませ、与えられている自室に戻ると、銀のトレーの上に二通の手紙が置かれていた。  スゥエンは、夢中で手に取り、封を切った。  一通は、兄と父の連名で、今回の事態を詫びた手紙だった。オルテガの圧力に抗しきれなかたこと、率直に婚儀の申し入れを伝えられなかったことを切々と詫びていた。 ー仕方ないさ---。ー  兄も父も、そう強い人間ではない。況してや、小国のナヴィアが、大国のバスティアに力業で勝てる訳がない。兄からの報せでは、国境から他国の兵の姿は消え、隊商も無事に戻ったと手短に書かれており、礼が述べられていた。 ーオルテガに見初められたのが、不運---。ー  父や兄の言うように、不運だった---と思うより術は無いのだ。誰のせいでもない、運がなかったのだ。スゥエンは溜め息をつきながら、もう一通の封筒を開いた。  やや厚めのそれには、母や姉妹、弟からの書状が、それぞれ一枚ずつ認められており、一様に『身体に気をつけて、無理をせぬよう---』と記されていた。それと---姉マーヤの縁組みが決まった、という報告に、少し明るい気持ちになった。  だが、スゥエンが一番、待ち焦がれた手紙---エラータからの返信は、そこには無かった。 書きづらい話ではあるとは思ったが---やはり寂しかった。  心なしかショボくれているスゥエンの様子が、むしろ面白くないらしいオルテガは、その夜は些か、しつこ過ぎる程にその身をかき抱いた。 「お前は、ワシの妻だ。妻は夫のことだけを想っておれば良い。」  スゥエンは、所構わず吸い跡を付けまわるオルテガに閉口して、口を尖らせた。 「オレはあなたの妻じゃない。まだ、結婚なんてしてないし、するかどうかも分からない。」 「まだ、そんな事を言っているのか---。」  オルテガは、きっ---と睨みつけるスゥエンを呆れたように見下ろして、嘲笑った。そして、スゥエンの身体を俯せて、その腰を高く抱え上げた。 「この期に及んで、そんな言い種が通用するかどうか、よくよくと訊いてみるが良い。お前の恃みにしているヤツになッ------」  オルテガは、低く隠った声でスゥエンの耳許に囁き、容赦なくその雄を突き入れた。そして、スゥエンの口から、悲痛な喘ぎと啜り泣きを存分に引き出し、スゥエンが意識を手放すまで、赦さなかった。

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