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第1話  ④

「お疲れ様です」  居酒屋が多く並ぶ駅前の大通りから、一本細い道へと入った先。  小さなビルの一階に入っているスナック〝ルミエール〟のドアを開けたのは、午前二時半を過ぎた頃だった。 「お疲れ様、快君」  この店の主人の実華子が、着物姿でカウンターの皿を下げながら上品に笑いかけてくる。  彼女は亮次と大学時代の同級生らしく、その縁もあって従業員を送る仕事を引き受けているのだが、亮次と同い年にしては随分と若く見える。 「まだ片づけ中でしたか」 「今日はお客様のお帰りが少し遅かったのよ」 「手伝いましょうか」 「ありがとう。でも大丈夫よ。それよりそっちの彼は」 「わっ、ちょっとレイナ! すっごい綺麗な人がいるんだけど!」 「誰その人! 快が連れてきたの?」  店の奥のドアから出てきた従業員のレイナとミユウがたずねてくる。 「新しくうちで働くことになった一条悠利だ」 「えっ、男の人だよね? 女よりずっと綺麗じゃない?」 「ほんとほんと! すぐにでもうちで働けちゃいそうっ」  口々に騒ぐレイナとミユウに、悠利が思いきり眉間にしわを寄せる。どうやらこういう騒がしいのは苦手らしい。 「わあ、すっごい肌が綺麗! ね、美白してる?」 「絶対化粧水使ってるでしょ! ちょっと触ってもいい?」  手を伸ばしたミユウに対して、悠利はあからさまに身を引いて避けた。  だがそれくらいではルミエールの女の子たちはめげない。 「ちょっとやだぁ、照れてる?」 「えー、かわいいーっ」  悠利の表情はあまり変わらないものの、そろそろ限界がきそうな雰囲気が漂ってきている。 「えーっと、それじゃあ実華子さん。二人を送っていきますので」 「ええ。お願いね」  それにしても、悠利にあからさまに嫌そうな顔をされても話しかけ続けている女の子二人を、快は心の底から尊敬した。

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