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第8話 告白*
雅仁たちの分も酒が追加され、宴は続く。
「ん……おい、鬼火が部屋の中に入ってきてるぞ」
部屋は明るいので鬼火はぼんやりとしか見えないが、雅仁たちの目の高さをふわふわと頼りなげに漂っている。
「私が酔ってきたので、制御が甘くなったみたいです。大丈夫です。放っておいていただければ」
藍がおっとりと微笑む。
「触ってみてもいいか?」
「ええ」
雅仁が手をのばしてその淡い光に指先を浸す。
「意外と冷たいな。これは、何なんだ?」
藍は首を傾げる。
「人や動物の霊などと言われておりますが……実際のところ、私にも解りません」
便利な灯りですね、とのんびり笑った。……ふと、その微笑みが、赤く染まった。
雅仁がその視線を追うと、紅月と楡の行為がいささかエスカレートしていた。
膝にまたがった楡が紅月の唇を貪っており、密やかな水音が滴っている。
楡の小さな手は紅月の浴衣の合わせを寛げて、肌をなぞっている。
右肩から浴衣を落とした紅月の肌がしっとりと白く眩しい。
紅月が二人の視線に気がつくと、申し訳なさそうに笑って部屋の出口を示した。
「咲原様、参りましょう」
赤面した藍がそっと席を立った。
二つほど離れた部屋に入ると、ほうっと藍が息を吐いた。
「とんだところをお見せいたしました。楡は酔うとああして甘えたがるのです」
ああ、もう、と藍は赤くなった頬を押さえる。
「そうだ。こちらの部屋からも紅葉が見えますよ」
障子を開けようとした藍の手を、雅仁は後ろから手を重ねて止めた。
ぴくりと藍が固まる。
「紅葉よりも見たいものがあるんだが」
「あ、あの、咲原様」
「雅仁でいい」
「まさ、ひと、さま」
呟いた途端に藍が耳まで真っ赤に染まる。
「くく。藍は照れ屋だな。……こっちに来い」
雅仁は部屋の中央で胡坐をかくと、藍を抱き上げ向かい合わせになるよう膝の上に乗せた。
「藍。ちゃんと俺を見てくれないか」
頬も耳も真っ赤にして俯いた藍の顔を下から覗き込む。
藍は躊躇った挙句思い切って顔を上げ、雅仁と目を合わせたが……すぐに目を潤ませてまた俯いてしまった。
小さな手がおそるおそる雅仁の浴衣を掴む。
雅仁はその手を取ると、愛撫するように指の腹を撫でた。
うわべは優しい口調で、しかし冷徹に射抜くような眼をして藍の耳元に囁く。
「藍……藍、すまないが、俺は紅月のようには優しくない。あまり焦らされると無理やりになるぞ」
ぴくりと藍の肩が揺れる。
雅仁が藍の指に順番に音を立てて口づけていくと、次第に藍の赤みが増し……五本目で我慢できなくなったように、藍は雅仁の胸にしがみついた。
「雅仁様っ、藍は、藍は、初めてお見かけした時から雅仁様をお慕い申し上げております……!」
雅仁はくくっと喉で笑った。
「知っている。よく言えたな。褒美だ」
雅仁は藍の頬に手を添えて胸から離すと、小さな薄桃色の唇を啄んだ。幾度か繰り返して藍の唇がしっとり蕩けると、ぷっくりとした下唇に噛みついた。
「……んっ」
痺れるような疼痛に藍が呻き声を上げる。
跡がつく寸前まで牙を立てその後を舌先でいたわる。
ぬるりとしたそれは唇の弾力を楽しんでから、間を割って藍の口内に侵入した。
「ふぁっ……」
ちゅ、くちゅ、と音を立てながら、藍の小さな舌をなぶる。
上顎をくすぐり、舌を唇でしごくように引きずり出す。
「はぁっ、ぁっ」
露になった赤い舌を唇で食む。
「んっ……ふっ……ぁっ」
藍が小さく悲鳴を上げたのは、その薄い舌に再び牙が立ったから。
血が出ないぎりぎりまで、尖った牙が柔らかい舌に食い込んでいる。
同時に、雅仁の手が藍の着物の袷に滑り込んだ。
こわばった体をほぐすようにゆるゆると肌の上を指が滑り、ぴん、と胸の頂点を弾いた。
「んぅ」
雅仁の牙で固定された舌がもがいて喘ぐ。
ふふん、と鼻で笑った雅仁は、藍の帯を解いて白い肌を灯りの元に曝した。
「ぃ、ゃあ」
白い胸と、唇と同じ色に色づいた突起までが暴かれる。
雅仁は手探りでその突起の周りをくるくると指先で弄んだ。
もどかしげに身をよじる藍。捕らえられた舌の脇から堪えきれない吐息が漏れる。
口内に溜まった唾液を飲み込むと、雅仁は指先で桜色の乳首を挟むとこりこりといたずらに刺激を与える。
「んぁっ、ぁあ」
藍の眉根が寄り、艶っぽい表情になる。
雅仁はそんな藍の顔を見ようと、舌の拘束を解いて唇を離した。
「……ぁ……」
途端に藍が微かに寂しそうな色を浮かべる。
それを見逃さなかった雅仁はにやりと目を細めた。
「痛みが癖になったか?心配するな、忘れられなくなるまでやってやる」
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