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第11話 愛か欲か*
飽きるまで胸を弄んだ紅月は、はて、どうしようかと手を止めた。
「な、んだよ」
猛攻が突然やんだので、戸惑ったように雅仁が視線を紅月に向ける。
「桔梗、白と赤、どっちが好みかい?」
「……赤?」
どんな裏があるのかと怪しみながら答える。
「ふふふ。そうかいそうかい。そっちがお好みかい?」
機嫌よく言った紅月は、雅仁の脚の間に移動すると太腿をぐっと持ち上げた。
「え、あ?おい!」
腿の内側にわざと音をたてて口づける。
付け根に近づくにつれて、雅仁は逃げるように腰をよじった。
「ふふ。大丈夫だよ。舐められるのは好きじゃないんだろう?覚えてるよ」
紅月は微笑んで雅仁の脚を下ろすと、ついと立ち上がって文机の引き出しからチューブを取り出した。
指先に中身を取ると、雅仁の後孔をなぞる。
「!」
「冷たいかい?ごめんねえ」
菊座を解すと、細い指が一本無理やり指先だけ押し込まれる。
痛くはないが、違和感が酷い。
「あれまあ。ほんとにきつい」
「使って、ないからな」
雅仁は顔をしかめた。
「ふふ。処女をもらうみたいでちょっとそそるねえ」
「冗談じゃない」
くちくちと音を立てながら、少しずつ指が飲み込まれていく。
紅月は身を乗り出すと雅仁に再び口づけをした。
舌を絡めて弄ぶ隙にさりげなく指を二本に増やす。
「んっ……や、めろ紅月」
ちゅっ、ちゅぱっ、と響く音の合間に雅仁が力なく抗議する。
紅月の頭を抑えるが、力が入っていないので、それはまるで愛撫のよう。
「頭がおかしくなる……お前の唾液、媚薬でも入ってるんじゃないのか」
「なんだい、化け物扱いかい?酷いねえ」
「正真正銘俺もお前も化け物だろうが……」
呟くように応える雅仁の目は少し潤んでいて、紅月でもぞくっとするような色気を孕んでいる。
ようやく二本目の指が入りきり、中で少し動かしてみる。
「あぁっ……くそっ」
とたんに雅仁が腰を浮かせ眉根を寄せた。どうやら良いところを突いてしまったらしい。
雅仁自身がたらたらと先走りをこぼす。
見つけたその箇所を二本の指で虐めながら、紅月は意地悪く聞いた。
「ねえ桔梗、昔私が通っていたこと、思い出してくれたかい?」
雅仁は正直答えるどころではなさそうだったが、喘ぎ声の合間に切れ切れに言葉を紡いだ。
「俺に格別入れ込んでた客の一人にいた気がする、くそっ、ぁあ……、もしかしたら中でも甘やかしてくれてたのが紅月だったのかも……いいかげん、そこ弄るの止めやがれっ」
紅月は満足そうに笑った。紅い唇が弧を描く。
「思い出してくれたみたいだね?本当は身請けしたかったのだけれど、わからず屋の妓楼主が、私みたいな得体の知れない男には頷かなくてねえ。しょうがないから貢ぎに貢いでいたよ」
懐かしそうに目を細めて、もう一度口づける。
ちゅっ……くちゅっ……ちゅぷっ……
空いた左手で雅仁の手を握り、愛しげに愛撫する。
雅仁は完全に腰が砕けていて、とろんとした目で紅月を見上げていた。
紅月は目を合わせて優しく囁く。
「ほら……完全に三本咥えられるようになったよ?」
ぐちゅぐちゅと中で細い指が肉壁を弄ぶ。
「あぁっ……くっ……はやく……」
「んん?」
熱に浮かされたように掠れた雅仁の言葉が快楽で途切れる。
「早く……挿れやがれっ」
「いいよ。可愛い桔梗……」
紅月は指を抜くと、浴衣を着たまま裾を捌いて下着を脱いだ。
とっくに勃ち上がっていたそれを、熟れた後孔に押し当てる。
雅仁の体を抱き締めるようにして、根元まで雅仁の中に埋め込んだ。
きつくてみちみちと音をたてそうなほどだった。
「あっ……はっ、桔梗、締め付けすぎだよ」
「はぁっ、く、ぅっ」
雅仁は苦しげに唇を噛み締めて何かを耐えている。
「ごめんね桔梗。まだちょっと早かったかい」
雅仁が媚薬と称した口づけを唇に与える。
舌を柔らかく絡めながら、ごくゆっくりと抜き挿しを行う。
「んっ、……あぁ……くっ」
口づけの合間にこぼれる雅仁の声が、少し甘くなってきた。
後ろも馴れてきて、締め付けが気持ち良い程度の強さになった。
紅月のものの形にぴったり沿って締め付けてくる。
まるで紅月の為に誂えたかのようにしっくりと。懐かしい、ずっと焦がれていた感覚。
不覚にも、思っていたより早く射精感が込み上げてくる。
「桔梗、ごめんね。動くよ」
「ん?……ふっ、ぁ」
短い動きで雅仁の奥を突く。
だんだんと紅月も息が荒くなってきて、雅仁の中に欲を吐き出した。
吐き出しても紅月のものは芯を失わず、貪欲に悦楽を求めている。
額に汗が浮かんで、前髪がはりついている。
紅月はいらいらと髪を退けて額の汗を手の甲で拭った。
雅仁を横向きにすると、片足を上げさせてそのまま勢いよく再度挿入する。
「くっ……!」
がつがつと最奥を突くと、雅仁は唇を噛み締めて喘ぎ声を堪えた。
「駄目だってば桔梗。鳴き声を聞かせておくれな」
浅い箇所を抉って、強引に雅仁の口を開かせる。
「はぁっ、……ぁっ、……んっ」
雅仁が身を捩ってシーツを掴み声を堪え、それでも漏れる熱い吐息が、紅月には愛しくて堪らない。
「そう……綺麗だよ桔梗」
眉間に深く溝を刻み、それでも崩れない美貌に見惚れる。
最後は明け方ごろ雅仁が気を失うまで、紅月は思う存分雅仁を鳴かせた。
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