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きみさえいれば(4)
◇
「たけるー」
「んー?」
食事が終わり皿を洗っていると、龍がいきなり後ろから抱きついてきた。
「皿洗いが終わったら一緒に風呂入ってイチャイチャしようぜ」
耳を甘噛みしながら、低く腰にクる声でそう囁く。
「はぁ!?」
龍の言葉に動揺してしまい、思わずスポンジを握る手に力が入る。強く握りしめたせいで、小さな泡が飛び散った。
「……ふっ。たける動揺しすぎ。えっちなこと考えちゃった?」
そんな俺の反応を楽しむように、今度は耳元で笑い始める。
「ばっ、違うし……!」
そのギャップにまたやられてしまい、俺はどうしていいか分からなくなって、力まかせに皿を擦った。
「顔、りんごみたいに真っ赤になってる。可愛いなぁもう」
「りんご、じゃない……!」
「俺、果物はりんごが一番好きだよ」
「意味分かんないっ、」
くすくすと笑う龍の息が耳をくすぐるから、ただでさえ動揺してるのに余計に心臓がうるさくなる。
だいたい可愛いとか二十過ぎの男に言うことじゃないだろ。背だってあまり変わらないし、童顔なわけでもない。
だけど、そう思っていても好きな人に言われると嬉しいって思ってしまうし、いちいち照れてしまうのは付き合いたての頃からずっと変わらない。
顔赤くするとか俺のばか、単純。
いつも余裕な龍に、ちょっぴり悔しくなって睨みつけると、龍はにやっと笑って俺に軽いキスをした。
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