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きみさえいれば(6)
「あー……、幸せだ」
そこまで広くない浴槽に、結構大きい大人が二人が入っているから、ゆったりできるスペースは当たり前だけどなくて。
ただでさえ狭いのに、向かい合わせに座ってるせいで顔がめちゃくちゃ近い。
「たけるー」
「……んだよ」
龍は俺の手を取り、恋人繋ぎみたいに指を絡ませてた。
「いやぁ……、幸せだなって思ってさ」
「ば、か」
目を細めて口元を緩ませる龍につられて、俺の口元もゆるゆるになる。それを誤魔化すように一言そう言うと、口をきゅっと結んだ。
さらりと恥ずかしいことを言うコイツが憎い。
付き合い出して三年、同棲を始めて一年。
俺はまだまだ一緒にいることに慣れなくて。
慣れる日が来るのかなって、自分でも分からないくらい。
だから一緒にいるだけで、いっぱいいっぱいなのに。本当、龍はいつも余裕なんだ。
「たける」
「な、に……」
「あーもう可愛い!」
「は?」
絡ませた指が離れていく。
突然の可愛い発言とその行動に戸惑っていると、離れていった手は俺の背中に回された。
抱き寄せるように手を回す龍。けれど、狭い浴槽だから。そんなことしても、足がぶつかって近づくことなんてできない。
何やってんだよって、笑ってそう言おうとした時、謎のテンションの龍が先に口を開いたから。何を言い出すんだろうって、言い掛けたその言葉を飲み込んだ。
「絶対子どもできたらお前に似て可愛いと思うんだよな。純粋に子ども欲しいって今日初めて思えた」
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