7 / 224
きみさえいれば(7)
「……え、」
ガンッと頭を何かで殴られたような衝撃が走った。
思ってもいなかった話を振られたせいで動揺したからだろう。俺の唇が一瞬にして渇き、鼓動が激しくなる。
まさかここで子どもの話が出てくるなんて。
考えないように、気にしないようにしてた、あの夕方に感じた不安がもやもやとまた心を覆い始める。
子ども欲しいって言われてもさ……。
龍……。俺とお前じゃ子どもはできないんだよ。
どんなに欲しいと願ったところで、俺にはお前の子どもを生むことなんてできないんだ。
「たけ、る? 何泣いて──」
「……っ」
龍に言われて初めて気がついた。何涙なんか流してんの、ばかじゃん俺。
「ごめん、泣くとか、意味分かんないね」
そう言って必死に涙を拭くけれど、なかなか止まらない。
「たける、」
「もう、意味分かんな……、俺、本当に、」
俺だって、子ども欲しいよ。
産めるならお前との子、欲しいに決まってる。
子どもが生まれたら三人で川の字になって寝たいなって、“パパ”って呼ばれてるお前見たいなって、普通の夫婦みたいになれたらって。
何回も考えたよ。でも、そんなことできないだろ。
俺に子ども欲しいとか言わないでよ。叶えてあげられない。
「たけるごめん、いったん上がろう? お前すぐ逆上せるから」
何も言わずに本格的に泣きだした俺の手を龍が握る。
引っ張られてなんとか立ち上がり風呂場から出ると、龍がバスタオルを俺に被せた。
ともだちにシェアしよう!