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きみさえいれば(8)

「ごめん、無責任なこと言ったな?」 「……っ、」 「子ども欲しいとか、ごめん……。別にお前のことどうこうとかじゃあなくてさ、」 「俺、お前の……、子ども、生めない、」 「うん、分かってる……、本当にごめん」 バスタオル越しに龍が俺を優しく抱きしめる。 それにまた涙がこぼれた。 「あくまで、たらればの話だから。子どもって言ってもお前との子ども以外嫌だし」 「……っ」 「純粋に欲しいなって思ったのは事実だけど。ちゃんと言うと、最初は子どもができたらお前をずっと俺のもんにできるのにっていうただの欲だった」 さっきよりも抱きしめる力が強くなる。 何となく龍の声が少し震えてるような気がして、俺もゆっくり手を回した。 「付き合ってくれたのも同棲してくれてるのも本当に嬉しいって思ってる。だけど俺ね、お前が考えてるよりももっとお前のこと好きなんよ。毎日キスして抱きしめて、好きだの可愛いだの言ってるけど、そんなもんじゃねぇの」 「りゅ、う……」 「毎日毎日たけるのこと好きになんの。どうしようもなくお前が好きなんだよ。だから、気持ちも大事だけど、お前がずっと傍にいてくれるように、引き止めとくものが欲しいなって。ただそれだけだったけど。みちかちゃんだったっけ? 今日あの子肩車してみて、たけるとの子どもだったらもっと可愛んだろうなって思った」 「うん……」 「子どもをたけるを繋ぐための道具みたいに思ってたのに、それは間違ってたなって……。たけるとの子だったら本当にすごく愛しんだろうなって。だから思わず子どもなんて言ってしまった。ごめんな……?」

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