9 / 224
きみさえいれば(9)
龍の手が優しく頬に触れる。こぼれ落ちる涙をそっと掬ってくれた。
見つめ合って笑えば、心が一気に温まる。幸せで満たされる。
龍も色々考えてたんだって、そんなに俺のこと好きって思ってくれてるんだって。そう考えたら、胸がきゅっと鳴った。
「龍……」
俺は龍の頬に触れると、それからほんの少しだけ背伸びをして、唇にちゅっと軽いキスをした。
「勝手に解釈して、泣いてごめん……。お前の気持ち、聞けてよかった」
「たける……」
「子ども産めないけど、俺、ずっと離れるつもり、ないからね」
ちゃんと目を見てそう言うと、龍が安心したように笑った。
それを見て俺も気が抜けて笑い返した時、鼻がムズムズして。
「くしゅんっ」
脱衣場に俺のくしゃみが響く。可愛げのない、大きなくしゃみ。
すっきりして和やかになった雰囲気も一転。
へへっと照れて笑う俺の視界には、にやりと笑う龍の顔が。
「風邪引くといけないから、体を温めなきゃ」
「え」
「今度こそちゃんとイチャイチャしよう」
気が付くと俺の体を覆っていたバスタオルはなくなっていて。
抵抗もできずにまた風呂場に連れて行かれた。
END
ともだちにシェアしよう!