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きみさえいれば(9)

龍の手が優しく頬に触れる。こぼれ落ちる涙をそっと掬ってくれた。 見つめ合って笑えば、心が一気に温まる。幸せで満たされる。 龍も色々考えてたんだって、そんなに俺のこと好きって思ってくれてるんだって。そう考えたら、胸がきゅっと鳴った。 「龍……」 俺は龍の頬に触れると、それからほんの少しだけ背伸びをして、唇にちゅっと軽いキスをした。 「勝手に解釈して、泣いてごめん……。お前の気持ち、聞けてよかった」 「たける……」 「子ども産めないけど、俺、ずっと離れるつもり、ないからね」 ちゃんと目を見てそう言うと、龍が安心したように笑った。 それを見て俺も気が抜けて笑い返した時、鼻がムズムズして。 「くしゅんっ」 脱衣場に俺のくしゃみが響く。可愛げのない、大きなくしゃみ。 すっきりして和やかになった雰囲気も一転。 へへっと照れて笑う俺の視界には、にやりと笑う龍の顔が。 「風邪引くといけないから、体を温めなきゃ」 「え」 「今度こそちゃんとイチャイチャしよう」 気が付くと俺の体を覆っていたバスタオルはなくなっていて。 抵抗もできずにまた風呂場に連れて行かれた。 END

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