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素直になれないの(1)
「湯野の部屋って広いんだな」
「別にそんな広くもないと思うんですけど」
初めて遊びに来た部活の先輩かつ恋人にそう言われ、俺の心拍数が一気に上がる。
平然として答えてみせたけど、手は汗でベトベト。
突然家に行きたいと言われたから、昨日の夜に焦って片付けて。我ながらよくやった、ってそう思うくらい部屋がキレイになった。
だけど張り切って片付けました感があまり出てないといいなぁ。
「先輩、飲み物持ってくるんで適当に座っててください」
「おぅ、さんきゅ」
俺は“けっこうキレイにしてんだな”って部屋を見渡している先輩を気にしながら部屋を出た。
「はぁ……、緊張した」
小声で呟いて、閉めたばかりのドアにもたれかかる。ふぅと大きく息を吐いてみるも、心臓はうるさいまま。
だってさ、今まで誰かを部屋に入れたことなんてないんだから。しかも初めての相手が大好きな先輩なんだぞ。そりゃあ緊張もするって。
「……、」
パンって頬を叩いたらまだここにいることが先輩にバレてしまうから、俺はそっと頬を両手で包むと、それからぐっと押しつぶした。
とにかく、飲み物を取りに行かなくちゃ。
俺は先輩に気づかれないように、静かに階段を下りた。
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