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素直になれないの(2)
部屋に戻ったら何をしよう。
そんなことを考えながら、コップにオレンジジュースを注ぐ。
楽しく会話なんて、そんなハードルの高いことは無理に決まってるから。
だって今まで緊張しすぎて会話が長く続いた試しがない。
昨日見たテレビが面白かっただとか、次はどこでデートしたいだとか、話そうと思えばたくさん話題は転がってる。
けれど、先輩を目の前にすると、心の中では話したいことがあっても、それを声にすることができなくなる。
それにやっと言えたかと思えば、思っていることとは違う言葉しか出てこない。
可愛く返事をすることさえも、俺にとっては難しいんだ。
ただでさえそれだけでも大変なのに、今日は俺の部屋で二人きり。
他の人に助けを求めるなんてこともできないし。
隣の部屋には弟がいるけれど、弟は全然関係ないしね。
どうしようかなぁ。
先輩を楽しませられるものが何もない。
俺は隣にいるだけですごくすごく楽しいのだけれど。
素直じゃなくて口の悪い俺と一緒にいるだけで先輩が楽しめるとは思えない。
「あー、やっぱ断れば良かったかな……」
別に家じゃないとこで遊んだりもできるわけだし。って、いまさらどうしようもないか。
ぐるぐるとそんなことを考えながら、俺は飲み物とお菓子を持って階段を上がった。
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