16 / 224
素直になれないの(7)
「湯野……?」
「う、ぁ……、」
急に泣き出した俺を見て、先輩が戸惑っているのが分かる。
そうだよね。まさか弟に嫉妬とか思うはずないもの。
「湯野、どうしたんだよ、」
「……うぅ、ぁ、」
でも……、でもね。
俺と拓真を比べないでよ。俺よりも、拓真のほうがいいみたいに言わないで。
無愛想で素直じゃないって、そんなことは自分でも分かってるんだ。
けどそれは仕方ないだろ。
だって俺は、先輩が好きだから。先輩といると緊張して、余計に喋れなくなるんだもん。
俺だって、俺だって……。
「あー、湯野ごめん」
先輩は髪を掻きながら、照れたような困ったような顔で笑った。
それから「泣かないで」と言って俺の頬に触れ、優しいキスをくれた。
「最初からお前が嫉妬とかしてんの分かってた」
「……っ、」
「お前が嫉妬とかすっげぇ貴重じゃん? だって普段のお前ってさ、顔見てたらだいたい考えてることは分かるんだけどよ。言葉にしてくれないし、こうやって泣いてくれたりとかしないからさ。確信が持てないっていうか。だけど今回みたいなあからさまなのって、何考えてるのかちゃんと分かるじゃん。だからつい泣かせるところまでやっちゃったというか……」
「……ふぅ、……ぅ」
何だよそれ。わざとって酷いよ。
俺がどんな気持ちで二人のこと見てたと思ってるの?
ともだちにシェアしよう!