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修学旅行(1-3)

「風呂、どうぞ」 タオルで頭を拭きながら、さりげなく顔を隠す。けっこう泣いてしまったから、顔を見られたくないと思って。 だけど、そんな心配は無用だったみたいだ。 部屋に神崎はいなかった。 どこに行ったんだろう? 滝沢たちの所ならさすがに俺も一緒に連れて行くはず。 あいつらの前では、二人きりの時みたいなあからさまな態度を、俺にすることはないから。 飲み物……、買いに行ったのかな? 「俺も行こ……」 この部屋に一人でいるのは寂しい。 俺は持ってきたドライヤーで髪を軽く乾かすと、それから財布を持って部屋を出た。 「ぁ、」 「……っ」 けれど、ドアを開けて一歩目で足が固まる。 だって、壁に寄りかかっている神崎が視界に入ってきたから。 財布も何も持ってない。 何の用もないのに外に? それとも誰かと話してた? でも周りには誰もいない。 まぁ何でもいいや。 「神崎……」 “何してんの?” “俺今から飲み物買いに行くんだけど” “神崎もいる?” 自然な会話ならいくらでもあった。 だけど、言葉を口にすることはできなかった。 言わなかったんじゃない。 言えなかったんだ。 神崎は俺を見るなり、部屋に入って行ったから。 また一人、取り残される。 「……は、」 神崎は俺と同じ部屋にもいたくなかったんだ。

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