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修学旅行(1-4)
飲み物を買って部屋に戻ると、あまり大きな音を立てないようにそっとドアを開けた。
俺がいない間にお風呂を済ませたのだろう。テレビを見ている神崎の髪は濡れていた。
ドライヤーなら持って来ているよ、と声をかけようと思ったけれど、言い掛けてやめた。
俺が入って来ても神崎の視線はずっとテレビに向けられたままだし。 何よりまた冷たい言葉を返されたり、無視されたりしたくない。
もう神崎とこの部屋に二人きりだなんて嫌だ……。滝沢、助けてよ。こうなったら、アイツらの部屋に行くしかない。
『今から遊びに行く』
そうメールしようと携帯を開くと、俺の気持ちを分かってくれていたのか、滝沢からメールが来ていた。
良かった、これでここから逃れられる。そう思ったのもつかの間。
「え、」
滝沢からのメールは、期待していたものと全く違うものだった。
『平井が疲れて寝ちゃったから今日集まるのはナシな(゚▽゜)おやすみ~☆』
おやすみって、嘘だろ。
「……っ」
何で……。嫌だ。
神崎と、二人なんて、もう無理だ。
「吉岡」
「え……、」
重い気持ちのまま、携帯を閉じると、突然神崎に名前を呼ばれた。
はっと顔をあげると、目の前にはテレビのリモコンが差し出されている。
「俺もう寝るから。見たいのあったら勝手に見て」
「……っ、」
見たいのあったら勝手に見とけって? ふざけんなよ。俺は一人でテレビを見るために修学旅行に来たんじゃあない。
「見ない。俺も、寝る……」
内心イライラするも、堂々と態度には表せないから。視線を逸らし、俯いてそう呟く。
「そ、」
神崎は素っ気ない返事をして、リモコンを置くと「おやすみ」も言わずに電気を消した。
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