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修学旅行(2-4)

「神崎」 「ん?」 「次も授業だろ? もう行かないと時間なくなっちゃう。タオルありがとな」 吉岡がタオルを掴み、俺に見せるようにひらひらと振る。それからそのタオルで、汗を拭き始めた。    吉岡は一応同じグループにいるけれど、滝沢と話してることが多くて。 位置的に言えば、仲良しな滝沢と吉岡のそばに何となくいる、みたいな。 もう一人、滝沢の幼なじみの平井がいるけれど、平井も俺と同じような感じ。いや、奴は二人の母親ってとこかな。世話役というかさ。 だから、全く話さないわけじゃあないけれど、話をするかと言われたらやっぱり話さないし。 今まで吉岡とも特に仲良く話したことがないから、もちろんちゃんと吉岡の顔とか見たことなくて。 笑ったらこんなに可愛いとか、知らなかった。 唇の感触だって。 「じゃあ俺戻るわ」 「うん。さんきゅーな」 ばいばいと吉岡が手を振って俺を見送ってくれる。少しだけぎこちなく俺も手を振り返し、保健室を後にした。 「ヤバい……」 教室に帰る途中の階段でうずくまる。 思い出すのはさっきの吉岡の笑顔。首筋に光る汗。漏れる吐息。 そして、柔らかな唇の感触。 足りない。あれだけじゃあ、足りないよ。 もっと、吉岡にもっと触れたい……。 次の日、「おはよう」と笑った吉岡に、俺の胸がきゅっと鳴った。

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