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修学旅行(2-5)
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一度気になると、もう止まらなくなって。四六時中、吉岡が俺の頭の中にいる。
そのうち、キスしたい、頬に触れたいってそう思うだけじゃ足りなくなって。
首筋に噛み付いてあのキレイな肌に俺の噛み痕を残したいとか、そんなことばっかり。
思考がどんどんやばくなって、無意識のうちに吉岡の頬に触れてしまったり。
しかもそれだけじゃあない。ベッドの上で吉岡を思い出す度に、何度も抜いた。
あぁもうダメだ、吉岡と一緒にいたら何をするか分からない。
自分でも自分が怖くなって。
それからしばらくして、これが恋だと知った。
この気持ちが何なのか知ってからは、今まで以上に妄想が止まらなくなって、夢で何度も抱いた。
毎日、そんなことの繰り返し。
だからもう、関わること自体をやめた。
吉岡にいつ何をするか分からないのが怖かったから。
話しかけるのをやめたら、話しかけられても無視していたら、段々吉岡も笑わなくなった。
「神崎」って呼ばなくなった。
触れられそうな距離にもいられなくなったから、何かしてしまうんじゃあないかって心配は消えて。少しだけ、心が軽くなった。このまま関わらなければ吉岡への気持ちを忘れられるんじゃあないかって、そんなばかげたことだって考えた。
それなのに。そんな時に修学旅行だなんて。
「滝沢」
「お?」
「二人部屋の日は俺と吉岡が同じ部屋な」
「おっけ。じゃあ俺と平井が同じね?」
「あぁ。それと、これは吉岡には言わないで。お前が勝手に決めたことにして」
「あ?」
「頼むな」
「うん?」
滝沢はよく分かっていない様子だったけれど、秘密にくらいはできるだろう。
ばかだけどそれくらいは、きっと。
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