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修学旅行(2-6)
教室の隅に座り込み窓から空を眺めていると、ガラリとドアの開く音がした。
少しだけそちらに視線を向けると、平井と吉岡の姿が視界に入ってきた。
委員会の仕事が長引いたんだろう。何となくいつもより少しだけ戻る時間が遅い気がする。
それとも、俺の勘違いかな。
部屋割りのことで吉岡たちを待っていたから、長く感じていただけかもしれない。
「俺と平井、お前と神崎が一緒な?」
二人が戻って来たと分かると、滝沢はダッシュして二人の元に行き、何の前振りもなく唐突に部屋割り発表を始めた。
いきなり何のことだよと言う二人に、笑いながら修学旅行の部屋割りだよと滝沢が笑う。
俺は、少し離れた所からその様子を見ていた。
「俺が神崎と……?」
部屋割りのことだと分かった途端に、一気に吉岡の顔が曇る。離れたところにいるけれど、その表情もはっきり見えるし、戸惑った声もよく聞こえる。
まぁ……、そりゃあ嫌だよな。
訳も分からずに急に一方的に避けられて気まずくなった相手と同じ部屋なんて。
絶対嫌に決まってる。もしそうなったら俺だって不快だもの。
でも仕方ないだろ。
吉岡を好きなるきっかけになった寝顔を、いくら平井と滝沢とは言っても見せたくない。
あんな可愛い寝顔を誰かに見せるくらいなら、俺が理性を無理矢理保つほうがマシだって思ったんだ。
たった一日だし、俺だってそれくらいはきっとできるだろうから。
吉岡をじっと見つめたまま、心の中でそう決意を固めた。
その時、「神崎がお前とがいいんだってさー」と、へらへら笑う滝沢の声がして。
俺は滝沢を信じたことを後悔した。ばかだけどそれくらいはできるだろうって、考えた俺がばかだった。
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