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修学旅行(3-5)
……何だったんだ?
平井の謎すぎる行動に戸惑うも、頭はすぐに他のことへと意識がいく。
「平井って……」
滝沢が好きだったんだな。
「へぇー……」
意外っちゃあ意外だけれど、そうじゃないって言えばそうじゃないかも。
しかも、行動を起こすんだ。
「好きって言うんだ」
……羨ましい。
「はぁ、」
俺には無理だ。さんざん避けといて今更好きだなんて、そんなの勝手すぎる。
それに、反応が怖いからって告白できないんだから。
廊下の壁に体を預ける。ひんやりとしていて気持ちいい。
「はぁー……」
もう一度大きくため息をついた時、ガチャッと部屋のドアが開いた。
「……ぁ、」
「……っ」
ドアを開けたのはもちろん吉岡で。
目の前の吉岡とばっちり目が合う。
軽くしか髪を乾かしてないんだろう。まだ湿っていて、それが色っぽい。
……触れたい。
「神崎……」
「……っ、」
そんな潤んだ瞳で俺を見ないで。そんな弱々しい声で俺を呼ばないで。
あぁもう無理だ。
抱き締めたいし、キスしたい。この気持ちを、伝えたい。
……ごめん。吉岡、ごめんな。
俺は何か言おうとした吉岡から目を逸らし、そのまま部屋に入った。
バタンと閉まったドアに寄りかかり、そのままズルズルと座り込む。
「吉岡……っ」
小さく呼んだ吉岡の名前。この声が彼に届くことはない。
しばらくして、ぱたぱたと走って行く吉岡の足音が聞こえた。
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