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修学旅行(4-2)
『好きなんだ、お前のこと』
『え……?』
『本当はずっとお前のこと好きだったんだ』
『うそ……、』
『嘘じゃないよ。だからさ、俺と付き合って……?』
『う、ん……』
放送されていたのはよくある学園ドラマ。
どうやらすれ違っていた二人の想いが通じ合ったところらしい。
イケメンの俳優が可愛らしい相手の女優を強く抱きしめた。俳優と、腕の中で震えながら泣いているその女優を見て、乾いた笑いがこぼれる。
「ばからし」
ドラマだからそりゃあくっつくだろうよ。最後なんて、好きなように話作れるんだし。
現実とは、違うんだから。
「吉岡、俺、本当はずっとお前のこと好きだったんだ……」
ドラマの台詞を自分でリピートしたら笑えてきた。ドラマみたいに「うん」なんて返事、吉岡は言ってくれない。
「はは……、」
こういう状況で嫌なテレビ見てしまったなぁ。
俺はリモコンを手に取ると、ボタンを押してチャンネルを変えた。
ガチャ……。
ちょうどその時吉岡が帰って来たらしく、遠慮がちにドアが開く音がした。
ついさっきまで学園ドラマを見て感傷に浸っていた自分が急に恥ずかしくなる。
吉岡に聞かれなくて良かった。けど今、心拍数ハンパない
吉岡の顔、見られないよ……。
俺は、意識は吉岡に向けたまま、視線はそのままテレビに向けた。
吉岡は何も言わなかった。無言で部屋に入ってくると、視線を感じるから多分そうだと思うのだけれど、しばらく俺をじっと見ていた。
それから突然カバンをあさり始め、携帯を取り出した。
そして、滝沢からのメールを見たのか、急に静かになった。
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