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修学旅行(4-4)
「……ぅ、……っ」
電気を消して、ベッドに寝転んですぐに、隣からかすかに声が聞こえてきた。
小さな嗚咽。鼻をすする音も聞こえる。
もしかして、泣いてるの……?
「っ、」
体にかけていた布団を剥ぎ、上体だけを起こす。そんな俺に気づいたのか、吉岡は布団を深く被った。
「吉岡、」
「……っ」
「なぁ、」
俺は立ち上がりると、吉岡のベッドに行き、顔を隠している布団を引っ張った。
抵抗して隠れようとするも、泣いているせいで力が入らないのか、あっさりと布団を剥ぐことができた。
「吉岡、」
「う、ぁ……、あぁ……っ」
布団を奪われ隠すものがなくなった吉岡は、今度はうずくまると自分の手で顔を隠した。
「吉岡……」
震える体にそっと触れると、びくりと肩が跳ねる。視界に入るその背中はひどく小さくて。
ねぇ、吉岡。
その涙の理由は? 俺の態度が原因……? 泣くほど、嫌だったの?
それとも──……。
ごめんな、吉岡。
もう無理だよ、……もう我慢できない。
俺は顔を隠している吉岡の手を掴んだ。
力強く、ぎゅっと。
驚いた吉岡が俺の方を振り返る。でもまたすぐに顔を戻そうとするから、もっと力を込めた。
自分の手が熱を持っているのが分かる。反対に吉岡の手は冷たく感じた。
「吉岡……、」
だいぶ暗闇に慣れてきたからだろう、吉岡の表情もなんとなく分かる。
だんだんと表情が歪んでいくその吉岡の顔。目から溢れて頬を伝う涙が、暗闇の中で光っている。
「……ふ、ぅっ、」
「吉岡……」
ごめんな。
俺は掴んだ手を自分の方に引いて吉岡を抱き寄せると、そのまま口を塞いだ。
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