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修学旅行(5-2)
「好き……」
たった二文字なのに、言えなかったのは吉岡だから。
たった二文字が、とてつもなく大きな存在になった。
全部、吉岡だからだよ。
こんなに好きなのも、こんなに苦しくなるのも、こんなに誰かを想い続けるのも。
全部、吉岡だからなんだよ。
「好きだ、」
「ぅ、あ……、ぁあ、」
「吉岡が、すげぇ好き」
「ぁ……、ふぅ、っく」
最後におでこにキスをして吉岡を解放すると、うずくまって今まで以上に泣きだした。
「あ、ぁ、……ぅ、っ……く、」
さっきとは比べものにならないくらい大きな嗚咽。
「吉岡……?」
体が固まる。
そんなに嫌だったの……?
俺が好きだと伝えたことはそんなにも吉岡を苦しめたの?
「……、ごめん」
声がかすれる。
「……ぅ、あ、ぁっ」
「吉岡、ごめん。迷惑だった、よな……?」
“迷惑”
どんなに想っても、想い続けたところで、結局は迷惑にしかならなかったんだ。
「……っ、ぁ、」
こんなふうに泣かれたら、ただ純粋な気持ちで、泣き止んでと頭を撫でることもしてやれない。
覚悟は出来てたよ。だからずっと告白をためらって逃げて来たんだ。
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