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修学旅行(6-2)

「神崎」 「ん?」 「大好き」 「俺も、吉岡が大好きだ」 好きだと何度伝えても、好きの気持ちがどんどんあふれる。何回も言うと安っぽく聞こえる、だなんて言う人もいるけれど、言わずにはいられない。 「神崎、もっと、ぎゅって……」 甘えてもいいんだ。ぎゅってしてって、おねだりしてもいいんだ。 だって神崎は俺が好きなんだから。 両想いに、なれたんだから。 「嬉しい……」 神崎、俺、すっごい嬉しい。 自分でも最高におかしい顔をしてるって思う。 頬が緩みっぱなしだって。 「何そのふにゃり顔」 案の定、神崎にクスクスと笑われた。自分だって十分ふにゃり顔してるくせに。 ムッと頬を膨らませ、神崎を睨む。 けれど、「かわいい」なんて言って、キスなんかするから、怒ってみせたのに違う意味で真っ赤になってしまった。 「キスだけで真っ赤」 「うるさい」 「かわいいね」 「だって、初めてだから、キスするのは。恥ずかしくもなるでしょ……」 好きな人とするんだから、キスは恥ずかしいに決まってる。 恥ずかしくならないなんて、神崎は相当慣れてんだな。 ちょっと気に入らない、なんて思って神崎を見ると、ぽかんとした顔で俺を見ていた。 「え? キス初めて……?」 「いいじゃん別に。誰かさんとは違ってモテないからね」 天然記念物見ました的な反応に若干イラッとし、俺はぐいっと神崎を押す。 「いや、モテないとかじゃあなくて。ってか、お前はモテなくていいんだけど、うん……」 俺は一生懸命離れようと押してるのに、神崎はそう言ってさらに俺を抱きしめる。 「そっか、じゃああの時のはファーストキスだったんだな」   「は?」 「……あ、」 目の前には、しまったって表情の神崎。 ねぇ、神崎。“あの時”って何?

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