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修学旅行(6-3)

「神崎」 「何?」 「何のこと」 「いや、こっちが何のこと」 「ねぇ」 「……。」 「ねぇって」 「……。」 「ねぇってば……、んっ」 何のことかと聞いてるのに神崎ときたら質問を無視し、あげく俺の口を塞いだ。 最悪じゃん、キスして黙らせるなんて。 「神崎!」 唇が離れるとすぐに、文句を言ってやろうと名前を叫んだけど、ぎゅーっと神崎に抱きしめられた。 「どうしよ。喜ぶ資格はないけど嬉しい」 「え?」 「今更だけど怒んないで聞いて。俺、保健室でお前が寝てる時にキスしたことあんの」 保健室で、キス……? え? 俺が保健室行ったのはあの時だけだよ? ボールで滑って足を捻ったバレーの授業。 そんなの、もう随分と前じゃん。 「その頃から、俺のこと好き、だったの?」 ドクドクと心臓が鳴る。 だって嬉しい。そんな前から……。 「無意識にキスしてた。好きだと気付いたのはそれより少し後だったけど。だから、お前のこと避けてたけど、嫌いとかじゃあなくて、キス以上をしてしまいそうで怖かっただけだから。嫌われたら嫌だなって……」 神崎はそう言うと、ちゅっと軽くおでこにキスをくれた。 だから俺は仕返しに、背伸びをして唇にキスしてやった。 「避けられるのは辛かったけど、それがあったから、神崎のこと好きだって自覚できたし。それに、俺の初めてのキスが神崎ってのに変わりないし……。だからもういいよ」 そう言ってへへって笑うと、神崎の顔が近づいて来たから目を閉じた。

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