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修学旅行(6-5)

「えへへっ」 「えへへっ、じゃあないよ、本当。ある意味一生の思い出になるよこれ。あーもう、ひどすぎる」 「神崎、大好き……」 腹が立つよ、本当に。 そんな可愛い顔で俺を見ないで。今すぐに、食べたくなるだろ。 「ばか吉岡」 俺は吉岡の顔が見えないように自分の胸元に引き寄せた。 でもそれもすぐに後悔。 可愛い顔は見えなくなったけれど、服越しに吉岡の体温が伝わってくる。 それから、直接触れなくたって分かるその体の柔らかさ。首筋に触れると、冷たいって声を漏らした。 「吉岡、つらい」 「へへっ。ねぇ、神崎、」 「なに」 「一生の思い出になるの?」 「なるでしょうね」 「じゃあさ、」 「うん?」 「責任持って一生傍にいるからさ……」 「え……?」 「一生離さないでね……」 俺の胸元に埋めていた顔をちょっと上げて、吉岡が俺の唇にちゅっとキスをした。 すぐに顔を戻してしまったけれど、一瞬だけ見えた顔は真っ赤で目も潤んでた。 あーもう本当最悪。何でこんなことするかな? 今すぐやってやろうかと本気で思って、腕の中にいる吉岡を見れば、寝息を立てて気持ち良さそうに寝ている。 ……おい、寝んの早すぎだろ。 「はぁ、」 俺は髪を掬い上げ、おでこにそっとキスを落とした。帰ったら覚悟しろよ。 俺は、今すぐ押し倒したい気持ちを抑え、頭の中で必死にヒツジを数えた。 END

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