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修学旅行番外編(1-1)

◆平井side◆ 神崎の様子を見に行って部屋に戻ると、裕也がちょうど風呂から上がったところだった。 「あ、平井! 風呂上がったぜ」 ナイスタイミングだと、頭をガシガシ拭きながら裕也が笑う。 そんな激しく拭いたら髪が傷むってば。そう思いながら帰りに買った飲み物を裕也に手渡す。 「おっ、これ俺の好きなやつ~!」 裕也は飲み物を受け取るとすぐに蓋を開け、美味しそうに口にした。 「ふっ、」 可愛い奴め。 「滝沢、おいで。俺が髪の毛拭いてあげるから」 俺は驚いて目を開く裕也から飲み物を取り上げた。 それからベッドに座り、前に座るようにぽんぽんと叩くと、裕也はしばらく考えてから、ゆっくり俺の前に座った。 「平井、髪くらい拭けるのに」 「だーめ。お前の髪が悲鳴上げてんの俺には分かるもん」 「えー……、俺いっつもこうやって拭いてんだけど。適当に拭いたら乾くよ?」 「でもせっかくきれいな黒髪なんだから。大事にしなさい」 「んだよー、平井ってお母さんみたい」 「はいはい」 ぶつぶつ文句を言う裕也を置いて、俺はいったんベッドを離れ、ドライヤーを持って来た。 少し弱めの風にしよう。 そう思ってスイッチを入れれば、さらさらの髪がひらひらと動く。 くるくると指に絡めて遊びながら乾かして、終わった後は手ぐしで髪をといてあげた。

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