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修学旅行番外編(1-2)

「ほら、できたよ」 「ん、ありがと。陽ちゃんが風呂から上がったら、俺が乾かしてあげるな」 最後にぽんぽんと頭を撫でると、裕也がへへっと可愛く笑った。 だけど、自分が何を言ったのか分かるとすぐに、慌てて口を手で押さえた。 ふーん、無意識で言っちゃったわけだ。 「裕、もっかい“陽ちゃん”って呼んでみ?」 顔を覗き込んで意地悪くそう言えば、裕也の頬が一気に赤に染まる。 そして俺から目を逸らすと、唇をきゅっと噛んだ。 小さい頃からずっと“陽ちゃん”って呼んでたくせに、高校入ってから急に“平井”なんて呼び出したからな。 だからこうやってたまに二人になった時に、気が緩むとコイツは“裕”に戻って“陽ちゃん”って呼ぶんだ。 「裕」 「んだよ、」 「ばぁーか」 「ばかって言う奴がばかなんだよ」 「はいはい」 口はいつも通りだけど、真っ赤になってる顔じゃあ説得力なんてものはない。  耳まで真っ赤になってる。 下の名前呼ぶだけで、そんなに赤くなっちゃうの? 本当に可愛いんだから。 「ゆーう」 俺は後ろから抱きしめ、裕也の肩に顔を埋めた。 最後に抱きしめた時より、少しだけ筋肉が増えたように思う。 運動神経良いもんな。当たり前だけど柔らかくないや。 「ひら、いっ! くすぐったい、」 だけど、感度が良いのは変わらない。 小さい頃から肩が弱い裕也はちょっとでも触るとすぐ笑いだす。 くすぐったくて笑ってるんだけど、時折漏れる吐息がやらしいから。 ついつい肩に触れていじめてしまう。

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