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修学旅行番外編(1-3)

「やめて欲しい?」 「うん、やめ……て」 「やっぱ裕はばかだよ、本当に」 やめてと言われてやめる奴がどこにいるって言うんだ。 少なくとも俺は、やめてあげる親切な奴じゃあない。 体を捻って抵抗する裕也の耳を、はむっと唇で挟んでやった。 「な、に……っ? 平井、今日変……っ」 「“陽ちゃん”って、もっかい呼んでくれたらやめてあげる」 「や、やだ。ぜって、ぇ、呼ばね……っ」 裕也の体に回した俺の手を、力強く掴むと爪を食い込ませてきた。 そんなことしても、離してなんかやらない。やめてなんかやらない。 「ゆう」 そのまま舌先でぺろりと耳を舐める。 「ぁ、やだ、」  「ゆーう」   「呼ばねぇってば、」 「じゃあやめない」 “陽ちゃん”なんてすぐ呼べるのに。なんでここまで意地になるかな。 俺は裕也の耳で遊ぶのをやめ、首筋に舌を這わせた。 風呂上がりの裕也からは、石鹸の良い匂いがする。 「んっ」 小さな声を漏らして、裕也が身をよじる。 抵抗する力は弱くなったけど、それでも嫌がってるのは分かる。 嫌がってるのに、それでもまだ“陽ちゃん”って呼んでくれない。 ねぇ、裕也。どうして……? 「ゆう」 「な、に、」 俺はいじめるのをやめて、裕也を自分の方に向かせた。 少しだけ息が上がって、うるうると瞳が濡れている。 俺は両手で裕也の頬を包み込み、そのままコツンとおでこをくっつけた。   「高校生にもなって“陽ちゃん”って呼ぶの恥ずかしいの?」 俺から目を逸らして欲しくなくて、しっかりと裕也を見つめる。

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