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修学旅行番外編(1-5)

「ゆう……?」 「中学ん時、俺が、“陽ちゃん”って、呼んだら、みんな呼び出したじゃん……っ。男子は、まだしも、女子まで“陽ちゃん”って、」 「裕、」 「嫌だったんだよ……っ! “平井”は、みんなのものでも、“陽ちゃん”は俺のだって! なのにお前、ふつーに、俺以外にも、“陽ちゃん”って呼ばせる、じゃんか……っ!」 「……っ」 「それが、嫌なんだよ! 俺が一番、お前のこと知ってて、一番仲良くて、一番好きなのに! 何で、途中から、仲良くなったやつと、同じなわけ……? 意味分かんねぇっ」 目からは相変わらず大粒の涙がこぼれていて。 泣きすぎたせいで鼻水まで垂れている。 ここまで泣くのは初めてかもしれない、ってくらいの泣きよう。 いつもへらへら笑ってるくせに。 どうしてそんなに真剣に泣くの? どうしてそんなに真剣に叫んでんの? ……どうして、そんなに可愛いの? 俺は片方の手で裕也の手首を掴み、もう片方を頭の後ろに回した。 ぐっ、と自分の方へ引き寄せ、そのまま唇を奪う。 「裕也」 「……んぅ、」 軽くキスをすると、何が起こったのか理解できないらしく大人しくなった。 俺はそれをいいことに、角度を変えて何度も何度もキスをした。 しばらく繰り返して唇を離すと、今まで見たことないくらい顔を真っ赤にした裕也が、今まで見たことないくらい目を大きく見開いて、本当に今まで見たことないくらいトロンとした可愛い顔で俺を見ていた。

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