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修学旅行番外編(2-2)

「“陽ちゃん”のこと知ってんじゃん。みんなが知らない昔の俺をお前は知ってる。“陽ちゃん”なんていう愛称はみんなのものになっても、“陽ちゃんそのもの”と“陽ちゃんとの思い出”は裕也だけのものでしょ?」 「そうだけど……、」 ごにょごにょと呟くように返事をして、裕也は俺から目を逸らす。 そうだけど、ってさ。それは分かってるんだけど、それでもってことだろ。 「それでも裕は俺を独り占めしたいんだ?」 顔をのぞき込むと、少しだけむっとしてまた顔を逸らす。 「別に……」 むっとしてても、頬やら耳は真っ赤なんだけどね。 「でも“陽ちゃん”を独り占めしたいんでしょ? すっごい独占欲じゃん。ねぇ…、何で独り占めしたいの?」 「知らね……」 今度は逃がさないよって、裕也の顔を両手で包み込んだ。 顔を逸らすなんてこと、もうさせないからな。 じっと、力強い眼差しで見つめれば、裕也はもう目線さえも逸らすことができない。 濡れた瞳で俺を見つめ返す。 「可愛い」 それから、ぎゅうっと裕也を抱きしめた。 その体は熱を持っていて熱いし、何より聞こえてくる心音がハンパなく早い。 ねぇ。 裕もずっと、俺と一緒の気持ちだったってことでしょ? 「裕也」 「……っ」 「好きだよ」 “え?”っと、驚いた顔で俺を裕也が見上げる。 俺はその、裕也の可愛いおでこに、目蓋に、鼻に頬、そして唇にキスをした。 「俺もお前を独り占めしたい」

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