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修学旅行番外編(2-3)

◆滝沢side◆ ━━━━━━━━…… 何が起きているのか分からなかった。 『好きだよ』 『俺もお前を独り占めしたい』 陽介の言葉が、ずっと頭をぐるぐると回っている。 この言葉の意味は、どういうこと? 俺の都合のいいように解釈していいんのかな。 「陽ちゃ……」 「うん、」 さっきまではできなかったけれど。勇気を出して、恐る恐る手を伸ばす。 それから陽ちゃんの首にぎゅっと抱きつくと、さっきよりも強い力で俺を抱きしめてくれた。 「独り占め、してい、いの?」 「いいよ、」 胸がドキドキして、苦しい。 「全部、俺のにして、いいの……?」 「うん、」 「幼なじみ、じゃ、なくなっても……?」 「いいよ、全部あげるから」 陽介の優しい声が、心地よく耳に響く。 涙があふれた。夢をみてるみたいだって、頬が緩む。 ずっと欲しかった。 陽介を俺だけのものにしたかった。 幼なじみじゃあなくて、もっとずっと近い存在になりたかった。 みんなの“陽ちゃん”になってからは、もっとその思いが強くなって。 何でみんなと俺が同じなんだろう。陽ちゃんにとって俺は特別じゃないの? って、ずっとそんなことばっかり考えていた。 だけどもういいんだ。 そんなのもう、どうだっていいんだ。 「ばかだな」 「……ぇ、」 「お前も俺が好きだったなら、遠慮なんかせずに最初から気持ちを言えばよかった…。お前だけじゃなくて、俺もばかだった」 「……俺はばかじゃない」 クスッて笑う陽介に向かって、ぷうっと頬を膨らませる。 陽介はさらに笑いながら、背中に回していた手を俺の頬へと持ってきて、両手で強く押さえた。 そのせいで、口から空気が出て行き、ブッっと変な音が出た。

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