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修学旅行番外編(2-4)
「ははっ」
「……な!」
「可愛い」
ちゅっとキスをして、陽介が優しく俺の頭を撫でる。
普段から陽介は優しいけれど、それとはまた違うその雰囲気にドキドキする。
両思いって、こんな感じなの? 俺、恥ずかしくて死んじゃいそう。
俺は自ら陽介の胸へと顔を埋めた。
「好きになった時から言ってたら、もっと早くから独り占めできたのにな?」
「……っ」
「そう思うだろ?」
相変わらず頭を撫でたまま、陽介がそんなことを言う。
確かに、両思いだったのなら、もっと早く言っておけば良かったのかもしれない。
そうしたら、すぐにこんなふうに甘やかしてもらえたのかな。
でも……。
みんなの“陽ちゃん”になってからもっと、陽介のことを意識したし、好きになった。
すごく大切な存在だって、強く分かった。
だから。
……だからね。
「別にいい……、これからを、全部もらえるなら、」
これからはずっと、俺だけのものになってくれるのなら。
もうどうだっていいんだ。
こんなこと考えたら、重いかな……?
「あぁー、たまんねぇなそれ」
「……っ、」
その後、珍しく顔を赤くした陽介が、「携帯貸して! 神崎に嘘のメールを送る」だの、「あぁ、風呂に入ってなかった」だのと騒ぎだして。
陽介に「寝ないで待ってて」と風呂に入る前に言われたけど、色々ありすぎたせいでだんだん眠くなってきて。
結局寝てしまった俺は、朝から意味の分からない“キスの刑”に処せられてしまった。
END
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