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ミサンガ(1)
◆祥汰side◆
「あー、お前そのミサンガって……」
「……っ」
「恋愛系の願い事が叶うってやつだよな?」
体育の時間に、一番バレたくなかった奴にバレてしまった。
足首だったら付けていても分からないと思っていたけれど。
俺としたことが……、体育があるのを忘れていた。
今は夏だから、基本的にジャージは禁止。体操服のズボンじゃあ、明らかに丸見えだ。靴下だって短いから隠すことはできない。
「……俺が付けてたら悪いのかよ」
どうにかして誤魔化さなければ、と思うものの、うまい言い訳が見つからない。動揺して、指先が震えてきた。
「いや、悪いとかじゃなくてさ……。お前、好きな奴いたんだ。誰……?」
「何でお前に言わねぇといけないわけ?」
「はぁ? お前なぁ、幼なじみに秘密ごとは無しだろ?」
ガンッと俺の足を蹴りながら、俺の幼なじみの雅宏がキレ気味に言う。
「ばっかじゃねーの? 意味分かんないし。だいたいそんな決まりなんかないだろ」
あまり大きな声で叫ぶと、周りの奴らに聞こえてしまうから。小さく、でもはっきりと、雅宏にそう言った。けれど、目線を合わせることはできない。
だってさ、言えるわけないだろ。俺の好きな奴は、お前なんだから。
もともと叶わない恋だって分かってるから、クラスのミサンガブームに乗っかって。
もしかしたら……なんていう淡い期待を抱いたりしてさ。
だけどこんなことしても叶うわけないよなって、自分でも自分がおかしくなったり。
でもそうしないと、やってられないから。
大きくなってしまったお前への気持ちを、他にどうしろって言うの?
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