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だって好きだから(1)

「愁……、お前何してんの?」 残業を終えて家に帰ると、付き合ってもうすぐ三ヶ月になる恋人がドアの前に座っていた。 「俺の家、雨漏りしてんの。だから今日泊めて?」 「雨漏り……?」 「うん、雨漏り」 コイツん家って雨漏りするほどボロかったっけ? 少し疑問に思ったけれど、可愛い恋人のお願いだから仕方ない。 携帯を見ると、一時間ほど前に、雨漏りするから泊めてという内容のメールが入っていた 「一時間も待つとかばかじゃん。風邪引いたらどうすんの?」 「その時は辰巳が看病してくれたらいいよ」 「いや、しないから看病とか」 簡単に言うなよ、看病とか。俺の理性試してんのかコイツは。だいたいこんな遅くに泊まりに来るのもおかしいだろ。 俺の口から思わずため息がこぼれた。 『付き合ってすぐに手を出す奴は嫌いなの。三ヶ月は絶対しない。体目的とかヤダもん』 友人時代、飲むたびに言っていた言葉。男同士なら仕方ないだろ。それなりに欲求が強いんだから。 毎回そう思っていたけれど……。 『“やらせてくれないなら別れる”って言われたから、別れて来た……! やっぱりみんな体目的なんだ……』 そんなことを言って、コイツが泣きだすから何も言えなくて。 もともとノンケだった俺には理解できない世界だったけれど、あまりにもコイツが無防備に泣くからだんだん可愛いとか思い始めてしまい。 気付けば「じゃあ俺と付き合うか?」なんて言ってしまって、今の関係に至っている。 「看病してくれないの? 俺は、お前が風邪引いたら看病する……!」 なのに、コイツは何なんだ? そしてコイツのために、本気で三ヶ月近く我慢してる俺も何なんだ本当に。 「はいはい分かったから。早く入れ。本当に風邪引く」 俺はしゅんとした顔の愁の腕を引き、家に入れた。

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