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だって好きだから(2)
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はぁ……、本当にコイツは何なんだ。
「辰巳……、お風呂一緒に入ろう?」
「俺が背中流してやる……!」
「服がないから辰巳の貸して?」
「ふふっ、辰巳の匂いがする」
耐えた、耐えたぞ俺は。
本当は入りたかったけれど、一緒に風呂に入ろうもスルーした。
できることなら背中だって流して欲しかった。そしてあわよくば泡プレイなんて。
俺のシャツを着てる愁を目の前にしても耐えた。ぶかぶかでたまらなく可愛かったけれど。
俺の匂い好き発言もスルーした。シャツ越しじゃあなくて直に匂わせてやろうかってんだ。
耐えた、本当に俺はよく頑張って来た。今だけじゃあない、この三ヶ月近くずっとだ。
なのに何で。
「辰巳……、一緒に寝よう……」
ふざけるのもいい加減にしろ。
「愁、別れたくなかったら今すぐ帰れ」
「え?」
「今ならお前に過去の奴らと同じこと言いかねない」
「辰巳……」
「頼むからもう帰って。我慢とか無理。雨漏りくらい平気だろ? 雨漏りしてない場所で寝ればいいんだから。だから、帰ってくれ」
「嫌だ! か、帰らない……!」
「ふざけるな!」
さすがの俺もこれにはキレた。
お前は一体何様なんだ? 俺のことなめてんのか?
「だったら俺が出て行く」
俺がお前をどれだけ好きで、だからお前の言葉守って三ヶ月近くも我慢してきたって、ちゃんと分かってんのか?
近くにあったジャンバーを手に取り、玄関に向かう。
「辰巳っ」
「……。」
「たつ、み……!」
「……。」
知らない知らない。
泣いてても気にしない。泣きたいのは俺なんだから。
もうコイツのことなんて知るもんか。
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