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だって好きだから(4)

「だって、辰巳は、もともとノンケ、だろっ」 「はぁ?」 「俺が、三ヶ月って、言ったからじゃあなくて、やっぱり男は無理って、思ってるから、俺のこと、抱かないんだって、思って……っ」 ぼろぼろと涙が目からこぼれ、頬を伝う。何言ってんだよ。そんなわけないだろ。 「愁……」 「雨漏りしてない……。本当は雨漏りしてない……っ。今日は抱いて、欲しくて、来たの……!だから、頑張って、誘った、のに……!」 何なんだ本当に、くそ、可愛すぎだろ。 俺は泣きじゃくる愁を、思いっきり抱きしめた。折れそうなくらいに、強く、力を込めて。 「お前が言ったんだろーが」 「ひ……っ、う……」 「お前が三カ月って、」 「う、あ……っ、」 「だから俺は我慢してきたんだぞ」 「ふぅ……、ぁ、」 「もう何だったの今までの我慢は」 「たつ、みっ、すきぃ……」 「……っ」 散々我慢してきたんだ。 お前のために俺は三ヶ月近くも! もう知らない。誰が優しくしてやるものか。 俺は愁をそのまま床に押し倒した。腕を押さえつける。身動きが取れないように。 「優しくなんかしてやらねーからな」 「ん……っ」 「ベッドまで運んでなんかやらない」 「い、い……っ」 泣きながら、愁がふにゃりと可愛く微笑んだ。 「す、き……」 「くそ!」 何なんだよもう、本当に。結局俺はコイツにかなわないんだ。 やっぱり、初めてだから優しくしたい。 俺は、無言で愁を抱き上げると、ベッドへと運んだ。 「え? ベッド……」 「気が変わった」 「た、つみ……?」 「明日、立てないの覚悟しとけよ」 「んぅ……っ」 ずっと我慢してきた。お前のことが大好きだから。 体目的じゃあないよって、他の奴らとは違うんだって。 お前に信じてもらいたくて、お前の言うとおりに我慢してきんだ。 だけど、もう我慢しなくていいんだろ? 「……知らねぇからな」 ──さぁて、どこから可愛がってやろうかな。 END

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