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俺じゃダメなの?(2)

「先輩……? 泣いてんの?」 「……っ、な、いて、ない!」 田崎の言葉に慌てて手で顔を隠し、溢れ出る涙を拭く。 ばか、泣くな俺。泣いたって自分が惨めになるだけだろ。今ならまだ誤魔化せる。だから早く、泣くのをやめなきゃ。 だけど田崎は俺の気持ちなんか考えもしないでその手を掴むと、俯いた俺を下から覗き込んだ。 「先輩、どーしたの? 俺が抱きつくの……そんなに嫌だった?」 「違……っ」 そう聞いてきた田崎は泣きそうな顔をしていた。どうしてお前が泣きそうなんだよとそんなことを考えている俺に、田崎はそっと手を伸ばし優しく髪を撫でた。 「先輩……」 弱々しい声が、彼の口から聞こえる。そしてもう片方の手で、俺の涙を拭いてくれた。 「ねぇ、先輩……、」 頼むからそんな顔で俺を見ないで。 頭を触らないでよ、涙を拭かないで。 “元カノなんか忘れて俺にしろよ” “俺だったらお前以外の奴を好きにならない” “ずっとお前だけを好きでいるから” 胸にしまってた想いが、 “抱きしめてよもっと” “代わりじゃ嫌だ” “俺を見て” 涙と一緒に、こぼれそうになる。 好きだ。 好き、田崎が好きだ……。 こんなにも。 「す、き……」 言葉が、勝手に口から出てきた。 咄嗟に手で口を覆う。 言ってしまったと分かった瞬間、今までとは比べものにもならないくらいの涙が溢れ出た。 「先輩……」 ねぇ、引いた? 気持ち悪いって思った? 知りたくないよ、お前の気持ちなんか。

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