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罰ゲーム(2)

━━━━━━━…… 数日後。 放課後に委員会の仕事があった僕は、終わった後急いで先輩と待ち合わせをしていた図書室へ向かった。 予定した時間より、少しだけ早い。待たせる時間が少なくなって良かった。 「てか谷崎、あと三日だな?」 「ああ……」 ホッと一息ついてドアを開けようとした時、中から先輩と誰かの声がした。 ……ん? 何を話しているの? まだ、入らない方がいいかな。 僕は、ドアに触れていた手をそっと離した。 あと三日って……。何があるんだろう。 「いやぁ、お前よくやってんな。罰ゲームで男と二十日間も付き合うなんてさ」 「お前が言ったんだろ。図書室にいる誰かを必ず相手にしろって」 「だって、まさか図書室にいる奴が男だけとか思ってなかったし。それにオッケーするとも思ってなかったわ」 「俺だって思ってねぇよ」 「てか、もとはと言えばお前のせいじゃん? お前が『下から数えたほうが早い頭してて俺にテストで勝とうとか百年早いんだよ』とかクソうぜーこと言いやがるから、まさかの勝っちゃったオレ様がお前に罰を下してやったんだよ」 はははっと、笑う他の誰かの声が耳から離れない。 頭の中では先輩たちの言葉がぐるぐる回っている。 図書室、テスト、罰ゲーム、告白、男。 僕がたまたま該当したから。たまたまその場にいたから。 あぁ、だからか。  いつもいつも、僕が不安になっていたのは。 頭が痛い。息もうまくできない。 「はぁ……、は、」 胸が苦しいよ。 『俺、お前のこと好きなんだけど。付き合ってくれない?』 嬉しかったのになぁ。 先輩の言葉、嬉しかったのに。 全部嘘だったんだね。少しの間の夢でしかなかったんだ。 早く気付けば良かった。 そもそも、接点のない僕を好きになってくれるはずなかったんだから。

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