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罰ゲーム(5)
*
「ゆーたん、学校来てねーな。毎日一緒に帰るの含めて罰ゲームだったのにー。今日で終わりのくせに、三日分クリアしてねーぞ」
“まぁ別にいいけどね”
勝手に「ゆーたん」とか呼びながら、罰ゲームをやらせた張本人の日々野は、ぶつぶつ言って、教科書をぐちゃぐちゃに鞄に突っ込んでいる。
だからコイツの教科書はあんなによれよれで汚いのか。
そんなことを思いながら、俺は日々野の肩を叩いた。
「なぁ日々野」
「あ?」
「罰ゲーム終わっていいんだろ? 俺今日別れるよ?」
「おぅ」
言ったことは守るよと、日々野は俺に背を向けたまま、手をあげてひらひらと振る。
俺はその手を掴んで、俺の方へと向かせた。
今から大事なこと言うからちゃんと聞いておけよ。
「別れてから」
「お?」
「また付き合う」
「おぅよ、って、はあ?」
俺の発言に驚いたんだろう。
一気に目を見開き、それからもう片方の手に持っていた教科書を床に落としてしまった。
「ちょ、谷崎お前……」
ぽかーんと口を開けたまま。日々野の顔は今まで見た中で一番の間抜け面。
おい、ばかが余計にばかに見えるぞ。
俺は落ちた教科書を拾うと、そのまま鞄に突っ込んだ。
「最初はお前のことも、お前に負けた俺もすげー恨んだ。で、俺の告白に頷いたあいつにもすげー腹立った」
だって相手は男だぜ? しかも初対面。それに俺はホモじゃねぇし。
「けどさ、あいつは俺のことずっと好きだったみたいに言うし。先輩だから好きになったとか、顔を真っ赤にして、可愛い顔で笑うし。もう本当にすげぇヤバいんだよ」
「………。」
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