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罰ゲーム(6)

「あり得ないだろ? 俺、悠に、キスしたいとか抱きしめたいとか、そんなこと思ったりしちゃってんの。でも他の奴にはこれっぽっちも思わないし? もうこれって悠のこと好きとしか言い様がねぇだろ…」 言いたいことを言って、日々野の顔を見る。 掴んでいた手を離すと、だらんと落ちた。相変わらず口は開いたまま。 「お前いつまで間抜け面してんだよ」 頼むから何かしらの反応をしてくれよよ、ぱちんっとデコピンしてやると、「いってぇーな! ばかが!」と叫んで俺を睨んだ。 「引くなら引いてもいいよ。でも俺、悠は諦めらんない」 ふざけてなんかない、俺は真剣に言ってるんだって、分かって欲しくて真剣に見つめる。 日々野はそんな俺をながら、痛いと言っておでこをさすった。 「別に引いたりなんかしねーよ。ちょっとびっくりはしたけどさ。まぁでもゆーたん可愛いし? お似合いなんじゃね?」 「あっそ」 俺は鞄を手に取ると、いまだにおでこをさすっている日々野に、ありがとうの気持ちを込めて、持っていたガムをおでこめがけて投げつけてやった。 「ぅ、お! いってぇな……ってガムじゃん!」 「バカ」 お前の罰ゲームはめちゃくちゃだったけど、悠に会えたわけだし。 今はいろんな意味で感謝してるからな。 俺は日々野と別れた後、悠の担任に家を聞いて、悠の家へと向かった。

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