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罰ゲーム(8)

「離し……てよ、先輩っ、やだぁ、ひぅ……っ、嫌だ、よ……」 俺の腕から逃れようと、悠が胸を押す。 弱っていて力が入らないから、押したところでどうすることもできないのに。それでも、悠は逃げようとし続ける。 ねぇ、悠……。 「落ち着いて、」 どうして? 急にこんな……。 もう、俺のこと嫌いになった? ぎゅううっと、抱きしめる腕にさらに力を込める。 その時、過呼吸になりながら必死に紡がれた言葉に耳を疑った。 「別れ、たく……な、い……っ」 え? 別れたくない……? 「僕は、先ぱっ……が、好き、なの、に……」 何でそんなこと。俺はまだ何も言ってないのに。 「悠……」 「ど……してっ、罰、ゲーム……な、んか、したの?」 「え……」 あぁ、あの時悠は聞いていたんだ。俺と日々野の会話を。 だから一人で帰って。 ばかだな、俺。 悠はあの日からずっと、毎日こうやって苦しんでたんだ。 俺は悠の涙を掬って、それから優しくキスをした。 「……っ」 ぴたっと悠の涙が止まる。 大きく開かれた目。 ああもう……、全てが愛おしい。

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