92 / 224

ストーカー(1-2)

━━━━━……… まただ。 また、背中に片宮からの視線を感じる。 さっきからずっと、俺の後を付けて来てるのも分かっている。 パッと振り返って見ればいいんだろうけれど、慌ててまた転けたりなんかしたらと思うと、それもできない。  はぁ……、俺は何をやっているんだろう。 思わず頭を抱えた。 犯人が確定したんだから一言言えばいいものを。 俺がやめろって言ったら、悲しい顔すんじゃねぇかな? とか、そんなことを思ったらアイツに対して何も言えなくなる。 本当に何をやってるんだ、俺は。どう考えたって、ストーカーする片宮が悪いだろう? 俺が何を気にかける必要があるっていうんだ。 だけど、一つだけ気になることが。 どうして俺のストーカーをしているのかってこと。 普通は好きだからとかそんな理由だろうけど、俺と片宮はほぼクラスでも喋らないから接点もないし、好きになられる理由がない。 顔か? 周りからは不良って呼ばれるし、そうとは言い切れないけど、わりと整ってる方だとは思う。 それとも、運動ができるから? 声が好みとか? まぁとにかく、何かしら見た目で好きになるものがあったってことなのだろう。 仕方がないから、本人に聞いてみるか。 俺は頼むから転けるなよと心配しながら立ち止まると、ゆっくり後ろを振り返った。  でも、この間みたいに転けている片宮はいなくて。 良かった、となぜか安心しながら、隠れている片宮を呼んだ。 「片宮」 「出て来ーい」 「いるの分かってんだぞ」 けれど、何の反応もなし。 バレてるんだから隠れたって無駄なのにな。 「片宮ー!」   ふぅん、出て来ない気か。 せっかく俺が呼んでいるのに。 ストーカーのお前を、心配までしてやったのに。 俺は歩いて来た道を引き返して、ここに隠れてんだろうなって場所を覗き込んだ。

ともだちにシェアしよう!