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ストーカー(1-2)
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まただ。
また、背中に片宮からの視線を感じる。
さっきからずっと、俺の後を付けて来てるのも分かっている。
パッと振り返って見ればいいんだろうけれど、慌ててまた転けたりなんかしたらと思うと、それもできない。
はぁ……、俺は何をやっているんだろう。
思わず頭を抱えた。
犯人が確定したんだから一言言えばいいものを。
俺がやめろって言ったら、悲しい顔すんじゃねぇかな? とか、そんなことを思ったらアイツに対して何も言えなくなる。
本当に何をやってるんだ、俺は。どう考えたって、ストーカーする片宮が悪いだろう?
俺が何を気にかける必要があるっていうんだ。
だけど、一つだけ気になることが。
どうして俺のストーカーをしているのかってこと。
普通は好きだからとかそんな理由だろうけど、俺と片宮はほぼクラスでも喋らないから接点もないし、好きになられる理由がない。
顔か? 周りからは不良って呼ばれるし、そうとは言い切れないけど、わりと整ってる方だとは思う。
それとも、運動ができるから? 声が好みとか?
まぁとにかく、何かしら見た目で好きになるものがあったってことなのだろう。
仕方がないから、本人に聞いてみるか。
俺は頼むから転けるなよと心配しながら立ち止まると、ゆっくり後ろを振り返った。
でも、この間みたいに転けている片宮はいなくて。
良かった、となぜか安心しながら、隠れている片宮を呼んだ。
「片宮」
「出て来ーい」
「いるの分かってんだぞ」
けれど、何の反応もなし。
バレてるんだから隠れたって無駄なのにな。
「片宮ー!」
ふぅん、出て来ない気か。
せっかく俺が呼んでいるのに。
ストーカーのお前を、心配までしてやったのに。
俺は歩いて来た道を引き返して、ここに隠れてんだろうなって場所を覗き込んだ。
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