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ストーカー(2-3)

ぎゅっ 「橘くん……」 できるならもう、何も言うことなく帰りたかった。 だけど俺の制服を掴んでいる高木がそうはさせてくれない。他に何を聞けって言うの? 「何?」 振り返って冷めた目で彼女を見下ろせば、相変わらずくるりとして潤んだ瞳で俺を見つめている。 「諦めるから、最後にお願いがあるの。少しでいいから抱きしめてくれないかな」 ね? お願いって、俺の服を掴む手に力が入る。 なんかもう本当に意味分からない。 抱きしめる? 抱きしめたら諦められんの? 「しなきゃダメ?」 「お願い」 「はぁ、」 何なんだよこの女。片宮でもこんな我が儘言わないのに。 「橘くん、」 はぁ、きりがない。やらなきゃきっと離してくれない。 俺はゆっくり高木に近づいて、その小さな体を抱きしめた。 甘ったるい香水の香り。俺の背中に回される細い手。 あーあ、嫌だ。 やっぱり片宮がいい。 この間抱き上げた時、ストーカーなんて大胆なことするくせに、俺の首に手を回す時はすごく遠慮してた。 いいのかな? って、すごく気にしてて。 それがちょっと可愛いって思ってしまった。 香水も付けてなかったけど、石鹸のいい香りがした。 どうしよう。今すぐ片宮を抱きしめたい。 「あ……」 俺は何をやってるんだろう。 「ごめん、もういいよな?」 名残惜しそうな表情を向ける高木を置いて来た道を走った。

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