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ストーカー(2-4)
ばかなことをした。
いくら早く帰りたかったからって、高木のことを抱きしめるべきではなかった。
片宮は俺のストーカーだぞ? 片宮のことずっと考えてたのに、そのことを忘れてた。どこにだってついて来るんだアイツは。
だったら今は? 今だって、絶対見てたはず。俺が、高木を抱きしめたところを。
遠くからだったら会話だって聞こえない。勘違いして泣いてるかも。
「くそっ、」
片宮の泣いてる顔が頭に浮かぶ。
どんな思いで、さっきの俺らを見てた?
違う。違うんだよ片宮。
俺が好きなのはお前なんだ。
「片宮っ、出て来い!」
「片宮!」
名前を呼んでも返事はない。
意外とすばしっこい奴だから、走ってどこかに行ったのかもしれない。
そう思いながらふと足元に目をやると、ぽつぽつと地面に染みがある。
涙……?
あぁ……、片宮やっぱり泣いたんだ。
ばかなことをした、本当に…。
「片宮、ごめん……」
探し出すのは無理がある。
俺は片宮に電話をしようと、携帯を取り出した。
「ばかじゃん、俺」
俺はこの時初めて、片宮の携番さえも知らないことに気付いた。
本当に片宮のこと何も知らない。
俺は開いた携帯を閉じると、ポケットに閉まった。
明日、片宮に聞こう。携番もメアドも。
そしてちゃんと伝えよう。俺の気持ちを。
好きだ、って。
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