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ストーカー(2-9)

* 泣きじゃくる片宮を抱き上げた。 遠慮がちに回された手さえも、愛おしく思える。 あぁ、片宮だ。午前中顔が見られなかっただけなのに、もうずっと会っていないように思える。 ぎゅうっと、抱きしめる手に力を込めた。 この間もそう感じたけど、相変わらず軽くて小さな体。 俺は首筋に、軽くキスをした。 それから先生に一言言って、片宮を保健室から連れ出した。 カタカタと小刻みに震える肩。肩に感じる温もり。小さく漏れる嗚咽。 今もかなり泣いてるけど、きっと家でもいっぱい泣いたんだろうな。 さっき見た時、目がすごく腫れてた。 一人で泣いてる片宮を考えると、胸がキリキリと痛くなる。 ごめんな。片宮、本当にごめん。 俺は屋上に着くと、抱きしめたまま、片宮に直接風が当たらないようにして座った。 「片宮、顔上げて」 俯いている片宮の顎をゆっくり持ち上げると、潤んだ瞳で俺を見つめる。 すりすりと、指先で頬を撫でた後、 ちゅっ 俺は優しく目蓋にキスを落とした。 「た、ちばな……くんっ……」  驚いた片宮が、大きく目を開く。この顔も、とても可愛い。 「もう黙れって」 「んっ」 両手で頬を包み込み、啄むようなキスを繰り返す。 甘くて柔らかな唇。 夢中になって、何度も何度も。 最後に、ちゅっと上唇を吸い上げ、もう一度力強く抱きしめた。

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