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はっきりしろよ(2)

「余ったから仕方なくあげるだけなんだからなっ!」 だけど。口から出て来た言葉は、相変わらず可愛げのないもの。 お、俺のばかっ。 また可愛くない言い方して!ああもう……最悪だ。 ただでさえ緊張で手が震えているのに、こんな失態をしたせいで余計に緊張してしまう。 俺は、その手の震えが立川にバレないように、チョコを握る手にぎゅっと力を込めた。   お願いだよ。チョコを、もらって。   「なにその言い方。余り物なんて要らない」 だけど、立川のために作ったチョコは、冷たい言葉とともに突き返された。 二回目。 前回よりも、もっとダメージがデカい。 「ひ、人がせっかくあげようとしてんのに」   「頼んでねぇって」 いい加減にしろよ、って目でも言われてるみたいだ。 俺の方をきちんと向いてくれるのならまだしも、顔だけ少し向けられているから、睨まれている感がすごい。 俺は、立川に突き出したチョコを、そっと後ろに隠した。 「いらないなら、た、担任にあげてくるからなっ」 「だから勝手にしろよ」 言い合いなんていつものことで。冷たい態度だっていつものことで。だけど何だかんだいって一緒にはいてくれるから。 嫌われてるわけじゃないと思うのに。 なんで? なんで俺のチョコはもらってくれないの? 「た、立川の、ばかっ」 「はぁ?」 俺は涙が溢れないようにぎゅっと歯を食いしばって、そのまま教室を飛び出した。

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