109 / 224

はっきりしろよ(3)

* 何なんだアイツ。意味分かんねぇし。 突然チョコを押しつけて来たと思えば、余ったから仕方なく? ふざけるのもいい加減にしろよ。 走っていくアイツの背中を横目で見ながら、大きく溜息をついた。 余りのチョコならさ、俺が受け取ろうが受けとらまいが、別に関係ないじゃん。 「余りで、しかも仕方なくのチョコなんて、誰がもらうかっ」 何で好きな奴から、愛のないチョコをもらわなきゃなんねぇんだよ。  何でももらえればいいってもんじゃない。 なんか、イライラを通り越して悲しくなってきた。 俺は髪をくしゃくしゃに掻いて、机に俯せになった。 好きな奴からのチョコならさ、気持ち、欲しいに決まってるだろ。 「真木のトリュフ、超おいしいんだけど」 「アイツ、手作りでお返しするとかやるなぁ」 色々考えるのが嫌になってしばらく俯いていたけれど、隣から女子のうざったい声が聞こえてきた。 聞きたくなくても聞こえてしまうのは、アイツの名前が出て来たから。 真木がトリュフ? アイツ、お返しにトリュフ作ったのか? ……俺の大好物じゃん。 チラッと顔を上げて隣を見れば、緑色のシンプルな袋を持っていた。 その女子のチョコは俺とは違った袋に入っている。 え? 真木からのチョコだよな? どうして?緑の袋? 俺のはピンクだったのに。リボンまで付いていた。 もしかして、と勝手な期待が胸に広がる。 俺の好物? 俺だけ別? それってさ……。 がばっと顔を上げてクラスを見渡すと、同じ緑の袋がいくつも目に入る。 「……っ」 俺にだけピンクにしといて、あんな言い方。 ばかじゃん、超分かりにくいんですけど。 「ほんっと、ばか」 だけど、俺はアイツに何もあげてないのに、わざわざチョコを俺の分まで用意してくれたんだから。 そこで何かしらの意味があることを、気づかなかった俺もばかか。 「……くそ、」 俺は、きっとアイツがいるだろう屋上へと走った。

ともだちにシェアしよう!