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はっきりしろよ(3)
*
何なんだアイツ。意味分かんねぇし。
突然チョコを押しつけて来たと思えば、余ったから仕方なく?
ふざけるのもいい加減にしろよ。
走っていくアイツの背中を横目で見ながら、大きく溜息をついた。
余りのチョコならさ、俺が受け取ろうが受けとらまいが、別に関係ないじゃん。
「余りで、しかも仕方なくのチョコなんて、誰がもらうかっ」
何で好きな奴から、愛のないチョコをもらわなきゃなんねぇんだよ。
何でももらえればいいってもんじゃない。
なんか、イライラを通り越して悲しくなってきた。
俺は髪をくしゃくしゃに掻いて、机に俯せになった。
好きな奴からのチョコならさ、気持ち、欲しいに決まってるだろ。
「真木のトリュフ、超おいしいんだけど」
「アイツ、手作りでお返しするとかやるなぁ」
色々考えるのが嫌になってしばらく俯いていたけれど、隣から女子のうざったい声が聞こえてきた。
聞きたくなくても聞こえてしまうのは、アイツの名前が出て来たから。
真木がトリュフ?
アイツ、お返しにトリュフ作ったのか?
……俺の大好物じゃん。
チラッと顔を上げて隣を見れば、緑色のシンプルな袋を持っていた。
その女子のチョコは俺とは違った袋に入っている。
え? 真木からのチョコだよな? どうして?緑の袋?
俺のはピンクだったのに。リボンまで付いていた。
もしかして、と勝手な期待が胸に広がる。
俺の好物? 俺だけ別?
それってさ……。
がばっと顔を上げてクラスを見渡すと、同じ緑の袋がいくつも目に入る。
「……っ」
俺にだけピンクにしといて、あんな言い方。
ばかじゃん、超分かりにくいんですけど。
「ほんっと、ばか」
だけど、俺はアイツに何もあげてないのに、わざわざチョコを俺の分まで用意してくれたんだから。
そこで何かしらの意味があることを、気づかなかった俺もばかか。
「……くそ、」
俺は、きっとアイツがいるだろう屋上へと走った。
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